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将軍に親近感が湧きまくる:マンガ『大奥』の感想

大奥 1 (ジェッツコミックス)

 

今更かよって感じですが…やはり売れてる&何度もドラマ化されるようなマンガは面白いな!!というか、感染症が身近すぎる今こそ、読むべき作品かもしれないな。

…ということで、今日は私が今ハマってるマンガ、『大奥』の話。

2023年1月?にまたドラマ化されるようで、今「マンガPark」というアプリで最終巻以外が(広告は観ないといけないが)全部読めるので、それで読み進めております。ドラマが終わっちゃったらアプリの公開範囲はもっと狭まっちゃうかもしれないから、今がチャンスかも。

 

もう知ってるわい、という方が多いかもしれませんが、一応あらすじ。

江戸幕府、三代将軍・家光の時代、男子のみを襲う謎の疫病が国中に流行り、 男子の数が激減。家光も病に倒れ、秘密裡に将軍職は女子へと継がれていく。男子は種馬として大切に育てられ、江戸城大奥までもが、希少な男子を囲い、「美男三千人」と称される「男の世界」となっていった。貧乏旗本の家に育った水野は、経済的理由などから大奥入りを決意。女人禁制の大奥で巻き起こる事件とは…!? 
 (白泉社『メロディ』の中の『大奥』紹介ページより引用)

 

とにかく、いろんな性格の人間のいろんなエピソードを、細かく美しく(時にとことん恐ろしく)描いていてそこが面白い!人間の愚かさも素敵さもまるごと詰まってて、読み始めたら一気に引き込まれる。「届かないけどずっと持ってる思い」とか、「意外なところで果たされる念願」とか、「本当に理解してほしい人だけが見抜いてくれる、自分の美点」とか、「人生に降りかかってくる理不尽」の描き方が…まあ丁寧で…(かつ、飛ばすところはすぱーっと飛ばす、スピーディーさもある)。印象的なシーン&エピソードが多すぎて、読んでる間、かなり頻繁に泣いている…。長い連載だけど、それぞれの将軍が直面する問題がさまざまなので、全然飽きない、ずっとはらはらドキドキしながら読んでる。このマンガでも何度も描かれるけど、社会に大きな影響を及ぼす出来事の原因だったり根っこだったりが、実はたった一人の人の恨みやこだわりや希望にある、ってことは今も結構あるよね。いろんな人の、良くも悪くも強い思いが、糸がからまって太くなるみたいに力を持っていって(あるいは細くとも、急に足に引っかかるみたいに、作用して)、時代が動いていくんだなーとしみじみ思った。

数世代前に起こったことがレジェンドになったり、歌舞伎になったり…ってことも描かれるんだけど、読者はそれらの基になった出来事も作中「リアルタイムで」読んでるから、まるでタイムマシンに乗って江戸時代を旅行してるような気分になる。それがまた面白い。

私は歴史を勉強しても、人となりに興味が持てない人間のことをすぐに忘れちゃうんだけど(だから学生時代に勉強したことはもうほとんど覚えてない…涙)、『大奥』では(男女逆転な点もはじめ、創作されてる部分も結構あるにしても)それぞれの人の性格や好みが手に取るようにわかるので、これを読んでから歴史の本を読むとかなり頭に入った。「この将軍は無駄に華美なものを嫌った」とか、「この将軍は話すことが苦手だった」とか、「この将軍は気難しいけどカステラが好きだった」とか。特に、あんまり歴史の授業では印象に残らなかったり、悪者扱いされていたような、将軍・歴史上の有名な人物の描き方がいいんだよね…。歴史は、「誰が誰の得になるために残すか」で、全然違うストーリーになるよなあってことも改めて確認できる内容。江戸時代以外も、よしながふみさんにマンガ化してほしい笑。


どの将軍のときにどんな出来事が起こったかも、それぞれの出来事が臨場感をもって描かれているので、覚えやすくなると思う(この作品ほど、「黒船来てやばい、怖い」って気持ちが理解できたり、「桜田門外の変、そりゃ起こりますわ」って思えるような作品には、私はこれまで出会ったことがなかった(そもそもそんなに歴史ものに親しんでいないのだが…そういう人でも楽しんで読める作品、ということ))。あと、「自分の意志とは関係なく勝手に権力やら決定権やらを持たされて、失敗したら四方八方から文句言われたり、命狙われたりする」将軍の立場を嫌だと思ってた人がいるかもしれない、っていう視点は、この作品を読んだからこそ得られたものだった。そうだよね…私もたとえ徳川の家に生まれても将軍にはなりたくないよ…。そういう点から、「民主主義」の意味についても問う内容になってると思う。世襲×ジェンダーの話だから、今の天皇制について考える上でも結構いろんなヒントがある話だと思う。

 

※ちなみに、私が(創作部分じゃない)歴史を復習するために使ってる本はこれ↓です。シンプルにまとめられてるので読みやすい(と言いつつ、通読しようと思ってるのにそれはなかなか進まず…)。細かな年号が入っていない本なので、そこは人によって好みが分かれるところかも。


誰が書いてるかわからないサイトなので信頼性はちょっと疑問だけど、『大奥』の中の各将軍のエピソードのどこまでが現実の人物をもとにしているのか見るのには、このサイトが面白い↓

netlab.click

 

一点気になるのは、「美しい男性」の描き分けがあんまりされていないところ…みんな同じ顔に見えてしまう…笑。でも、同じ(ように見える)顔の人が登場するタイミングはなるべく分けるようには工夫されている…と思う…!

 

もちろんフェミニスト各位にもおすすめな作品!痛快な台詞がいっぱいある。現実とつながってる、苦しいところもいっぱいある…!(←つまり、現実を生きる女性の苦しさを、フェミニズムにこれまで興味を持ってこなかった人と共有するのに便利な作品である、ということでもある)

 

Kindle Unlimitedにも(今のところ)2巻まで入ってます。