あけましておめでとうございます(おめでたいと思えない方にも、どうか少しでも穏やかな気持ちになれる時間がありますように…)。今年もよろしくお願いいたします。
昨年12月は、小説(短編)の賞に出すためにひたすら物語を書いてまして、気づいたら一本もブログ記事が書けていませんでした。が、私はそこそこ元気に暮らしております。
(小説は、恋人に的確な編集?をしてもらったこともあって、今まで自分で書いた物語の中で一番よいものになった(と思う)。今年も何か一つは物語を書いて、何かしらの賞に応募できたらいいな)
さて、そんな12月、私はアジアンドキュメンタリーズという配信サービスで、ドキュメンタリーを観まくっていた。どうしても日本の配信サービスで観られるドキュメンタリーは北米や西欧目線のものが多いと感じていて、それ以外の視点でも知らないといけないと思ったから。
(とはいえ、その国のトップから取材に対して圧力がかかったりする影響で、撮影や編集は結局北米・西欧が主導してることが多いのだけど…)
私が観た作品はどれも、書き始めたらいくらでも感想が書ける、濃厚なものだったんだけど、全部にそれをしようとすると作品を観て感じたことをどんどん忘れていってしまいそうだから、いつもより短めに、そして3~4記事くらいに分けて、各作品の感想をまとめていきたいと思う。
この素晴らしい配信サービスにはぜひ長く続いてほしいので、もっとたくさんの人に知ってほしい!
(配信作品はしょっちゅう入れ替わるようなので、私が感想書いた作品の配信が終わってしまっていたらすみません…)
目次
最後のひとり
ひとりぼっちで生きる人々を特集しました。
— アジアンドキュメンタリーズ (@asiandocs_tokyo) 2022年3月13日
<日本初公開>ドキュメンタリー映画「最後のひとり」配信中!
カスピ海のクルディリ島。水位上昇で島民が次々と島を離れて行。最後の住人となった老人。漁師たちが彼を弔うまでの最後の交流を静かに見守る…老人が残したものとは…https://t.co/duLJBfo9xJ pic.twitter.com/BIQPj20qCU
とても同じ時代のものとは思えない静謐さを湛えた作品だった。夢のような美しい映像で、観終わってからしばらくぼんやりした。ほとんど一人で生きるとはどういうことなのか、知ることができる。出てくる漁師たちがとても優しくて、それも染みる。私の恋人は、2022年ベストの映像かもと言ってた。
作品の前半は、一人のおじいさんの暮らしを映しているだけ。ひげを剃るところ、お湯を沸かすところ、体を洗うところ。おじいさんは何かの役に立つためとかではなく、ただ生きている。すべてがゆっくりで、静かで、少し寂しくて、ひたすら美しい。(これを美しいと思って眺める感じがもう傲慢なのかもなあとも思うのだけど…)
動画を観たあと、いろいろ調べていたら、このドキュメンタリーの数年前に撮影されたとおぼしき島の映像も発見した。まだ全部観られてないけど、かつてこの島にはバスが走っていたことや図書館があったこと、3つの集落(コミュニティ?)があったことなどが語られている。
このときはたぶん、「最後のひとり」のおじいさんは自身のお母さんと暮らしていたっぽい。このときの彼は全然寡黙な感じじゃなくて、『最後のひとり』だけを観たときは彼は一人で生きるのが好きな人で人と話すのも好きじゃないから島に残ったのかな?と思っていたけど、ほんとはそうじゃないのかもしれない。
あと、恋人とグーグルマップでもこの島を探したんだけど、日本語の情報がほとんどない島だったこともあってかなり苦戦した。
↓最終的にみつけたんだけど、投稿されている写真がどれも美しくて切なくなる。アゼルバイジャン、行ってみたいよー!
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中国の夢”一帯一路”
ドキュメンタリー映画「中国の夢 "一帯一路”」配信中!
— アジアンドキュメンタリーズ (@asiandocs_tokyo) 2022年1月20日
中国の戦略が「一帯一路」。アフリカでの工場建設によって中国企業は潤いますが、一方で農地を失ったエチオピアの貧しい農民現状を嘆く農夫がつぶやきます「かつては、貧しくても飲み水と農作物があった。今は何もない」https://t.co/HRAMowysAt
『最後のひとり』と同じ時代の作品とはとても思えなかった。
中国、良い意味でも悪い意味でもためらいのなさと勢いがすごい。ドキュメンタリーの初めのほうで、一帯一路戦略のコアになる都市・重慶は毎年20万人人口が増えてると言ってた。この計画が完成したら、アメリカなんてぜんぜん太刀打ちできなくなると思う。(特に経済的な)発展に全振りすることが善だと私はまったく思わないけど、少なくとも数年前数十年前の中国のイメージから更新できていない人は全員観たほうがいい。
中国が自国の製品を世界市場に売り込むため、習近平国家主席が立案した戦略が「一帯一路」です。今後40年以上をかけて、アジア、ヨーロッパ、そしてアフリカに向けて鉄道と海路、陸路を開拓する計画です。途中には駅や港、工業地帯も建設します。世界地図を、政治的経済的に自分たちの都合のいいように書き換えようとしているのです。その経済規模は1兆ドル。人類史上、最も高額な開発投資です。中国は資金と技術、繁栄の夢や人材とともに、ノウハウも輸出しようとしているのです。アフリカのジブチ、エチオピア、そしてパキスタンを訪ねます。
(アジアンドキュメンタリーズの作品紹介より引用)
中国の投資によってできた港で働くジブチの人は、中国のおかげで未来に希望ができたと語る。そのいっぽうで、同じジブチの中に、中国に行って列車の運転の仕方を学んだけれど地元に帰ってきてみれば自分たちに任せられるのは危険で給料の低い仕事ばかりで、列車の運転は中国人だけが独占していると話す人たちもいる。
あらゆる計画にについて、反対意見を無視できるから中国はあんなに早く発展できるのだけど、そこにごりごりふみつぶされる人はいったいどうしたらいいのだろう…と思いながら観た。みんなが豊かに暮らすということ(それは決して高級車をみんなが2台も3台も持てるようにしようという意味じゃない、けがしたり病気になっても経済的な理由で破綻する心配がなくて、季節の果物とか読みたい本とかを気軽に買えて、学びたいときに学校に行けて、時々旅行もできたりして、毎日くたびれきるまで働かずに生きていける、ということ)は、なんでこんなに難しいんだろう。
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支配される人々
ドキュメンタリー映画「支配される人々」配信中!
— アジアンドキュメンタリーズ (@asiandocs_tokyo) 2022年1月28日
コンゴの道路建設現場では、トラックや重機、全て中国から運んだものを使う。中国人と現地人の価値観の違い、信頼関係の欠如から工事は思うようには進まない。アフリカには中国人が押し寄せ、その影響力は増していく…https://t.co/Tz0pfDaoh4
(コンゴは「民主共和国」と「共和国」の二つがあるけど、このドキュメンタリーに出てくるのは「民主共和国」のほう)
『中国の夢”一帯一路”』とあわせて観るのがおすすめの作品。
中国からきた現場監督は、時間いっぱい一生懸命働くことが労働者として当たり前のことだと思っていて、そうしないコンゴの人たちを怠け者だと思っている。でも、素晴らしい奴隷になるために、なんで自分の人間らしい時間を犠牲にしなくちゃいけないんだろうね…。
このドキュメンタリーで特につらいなーと思うのは中国から派遣されてきた人とコンゴの労働者だったり業者たちだったりとやり取りをする通訳の、エディ氏の立場。
中国側の話してることをそのまま伝えると、コンゴの利益は奪われてしまう。
でも、コンゴ側だけを優先すると、彼の仕事は失われてしまうし、コンゴの「発展」もおくれてしまう。
どうか彼がこの仕事をしていてよかったと思える瞬間が、これから訪れますように。
時々挟まれるコンゴのラジオ番組の内容がもうすっごい「違う文化だなあ」と感じるもので、それも面白かった(今日は飽きちゃったからあとは全部同じ曲を流しとくね。自分はこれから飲みに行くから、文句ある人はこのバーに直接来てね。みたいなことを、ラジオパーソナリティが言ってる。めちゃくちゃ人間!労働に殺されてなくていい)
この作品の背景事情について、こちらの動画(↓)をあわせて観るとさらに理解が深まる(そして電気自動車のシェアが増えることは必ずしも「善」なのか?と疑問が浮かぶ)。
マンガ『紛争でしたら八田まで』のタンザニア編のことも思い出しながら観た。
今年はアフリカ各国の歴史や現象についてももっと勉強したいなあ。
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ニュートピア
インドネシアのムンタワイ諸島
— アジアンドキュメンタリーズ (@asiandocs_tokyo) 2022年5月28日
先住民と暮らし始めたにノルウェーの青年
先住民は文明に取り入れ、よりお金を得るため
町に出稼ぎに行く
しかし島の変化に気がつく
進歩か悲劇か?
先住民が望むものとは?
ドキュメンタリー映画「ニュートピア」配信中!https://t.co/cNn6uHlA3L pic.twitter.com/x0jGoVDIdr
このノルウェー人の青年(オードゥン氏)が、勝手にムンタワイ族に「古き良き」生活を続けてほしいという幻想を抱いていることに時々むかつきつつ、でもそう思っちゃう気持ちもわかる部分がある…と考えながら観た。
インドネシアの先住民メンタワイ族の生活は、環境とのバランスが良く取れています。先進諸国が経済成長に苦しみ続ける一方で、彼らの世界は成熟し、安定しています。彼らは1日3時間だけ働き、貧富の差もほとんどありません。環境にも優しい暮らしをしていて、犯罪率も低いのです。そうした点では、彼らはしあわせな暮らしを実現してきました。しかし、そこに貨幣という価値が入ってくることで、人々は変わり始めます。現代文明の便利な道具はお金でなければ手に入りません。現金を得るために商売をはじめるのです。近代化が彼らの生活に何をもたらすのか。その先に、どんな理想郷があるのか。ドキュメンタリーは、私たちに問いかけます。
(アジアンドキュメンタリーズの作品紹介ページより引用)
メンタワイ族は、何日だったかな…10日くらい?の労働で、1年間家族みんなが食べられるだけの主食をつくることができるの。すごくないか…?
でもメンタワイ族的な暮らしには現代医療の技術がないので、軽い(と近代的な社会に住んでいる人が思う)病気でも人が死んでしまう。痛みに対して、植物を使って対処するか、祈ることしかできない。
公平で、苦しくなくて、しかも発展する社会、っていうのは実現できないんだろうか。
最近話した学生時代の友人(経済関係の研究をしてる)に、「人間は残念ながら欲深いから、難しいね」と言われてしまったけど、私はその可能性について引き続き考えていきたいよ。「人間の良心を信じる」作戦が無理だとしても、他の方法がなんかないだろうかね…。
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