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手の込んだ料理だけが幸せじゃあない:マンガ『今夜すきやきじゃないけど』

今日ご紹介するのはドラマ化された漫画『今夜すきやきだよ』のシリーズとなる作品『今夜すきやきじゃないけど』。

この作品があって「今夜」シリーズは完成するな〜と思った。『すきやきだよ』ドラマ版はもうすぐ最終回だけど、本当にすっごく理想的な映像化だったと思って毎週愛しい気持ちで観ている。原作とは違うオリジナルの部分も、原作の魂をちゃんと理解して受け継いでいる。

www.tv-tokyo.co.jp

(権利関係で難しいのかもしれないけど、邦ドラももっとアマプラやネトフリで配信してもらえたらいいのにな~。あいこちゃんの服の着こなしがいつも難しそうでかっこよくて、それを観るのも楽しい…)

 

以下はマンガ『すきやきじゃないけど』のあらすじ。

広告代理店に勤める姉・たつきと、自分探し真っ最中の大学生の弟・とらお。汚部屋の中で始まった血が繋がらない2人の同居生活は、毎日もやもやストレスばかり。自分の幸せってなんだろう?

くらげバンチ作品紹介ページより引用)


『すきやきだよ』は料理に関するエピソードが多いけど、『すきやきじゃないけど』は掃除や片付けに関するエピソードが中心だ。元汚部屋住民の私(今も片付けは全然得意じゃない)としてはとても他人事とは思えない内容が綴られていて、深く刺さった。「片付けられない」ことが、過去を整理することを延期し続けていることの場合もあるよね…と思う(そうじゃなくて、片付いていない状況こそが落ち着く人もいるから、ひとまとめには語れないけど)。


『今夜すきやきだよ』はいい作品なんだけど「手料理=温かい」描写になりかねない部分がちょっとあり、それを作者の谷口菜津子さんも感じていたのだと思う。手料理じゃなくても(精神的に)温かいご飯って、いろいろあるじゃんね?それを今作はちゃんと描いていて、よかった。「すきやき」というアイテムの使い方が前作と今作で全然違って、そこも面白かったな。

(ちなみに、「みんなで楽しむこととみんなで食べることがセットになってる」雰囲気につらさを感じる人に届けたい物語として『作りたい女と食べたい女』という作品も挙げておきたい…私はWebで更新されたときに追っててコミックスは追えてないんだけど、たぶん3巻で出てくる人物がそういうつらさを抱えているキャラクターなのです)

 

『すきやきじゃないけど』の話に戻って。

あと、前作はちょっと「仕事が好きになれない人」が読むとつらいかもしれない…という内容だったので、そこが開かれた内容になっていたのもよかった。仕事が好きな人はそれはそれでいいことだと思うけど、仕事を生活の手段だと割り切って生きる人の気持ちだって、大事にされたいよね~。

大人の女性たちの描写が(職業や見た目など)バラエティ豊かなのもいい。

谷口さんはそれぞれのキャラクターのコンプレックスを丁寧に描く作家さんだな~と『すきやきだよ』で思ったけど、今作もそのよさがすごく発揮されてる。「すごい家族」が身近にいて、その人を追ってがんばってきた、でもそのことに疲れている…という人に(も)ぜひ読んでほしい作品になっているよ。