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加害者としての自分たちに向き合うこと:映画『雪道』の感想

自身の「加害者性」に向き合うことは、「被害者性」に向き合うこと以上に難しい。
最近、私自身の人間関係を振り返って、よくこのテーマについて考えている。

相手を知らずに傷つけてしまっていることもたくさんあるから、せめて、自分がしたことで良くなかったと自覚できることは、忘れないようにしたいと思っている。自分が「されて嫌だったこと」と同じくらい、「相手がされて嫌だったろうにしてしまったこと」を覚えていないといけないよな、と。自分の加害性に向き合うのは苦しいけど、私を踏みつけてきた人と同じになりたくない(…と言いながら、やっぱり実行は難しい)。

「日本が加害者だった歴史」についても、せめて同じことを繰り返さないように、「記憶する」努力が必要だと思う。
日本で、歴史(時々国語)の時間に勉強する「戦争」は、ほとんどいつも被害者側の視点から描かれているけど、それだけじゃ足りないと思う。

前置きが長くなってしまったけれど、そんな背景があって、「慰安婦」として性暴力を受けていた、韓国の女性たちを描いた映画を観た。
dia felizさんのツイートを拝読したのがきっかけだった。

(中略)


一緒にこの映画を観ていた私の恋人が調べてくれたところによると、この映画はもともとテレビドラマだったものにいくつかのシーンを追加してつくられているとのことで、映画としてのつくりはちょっと冗長だ。

でも、そういうことを飛び越えて、日本で生きている者の一人として観ておかないといけない映画だと思った。

雪道(字幕版)

雪道(字幕版)

  • キム・セロン
Amazon

 

(ちなみにこの作品は今のところU-NEXT に入っているので、まだ使ったことがない人は31日間無料体験の間に観ればお金を払わずに観られる。お金に余裕がないけど作品は興味あるんだよなあ、という方、もし体験がまだであれば使ってみてください)

慰安婦」の役割を押し付けられた女の子たち、ほんとうにまだ幼くて、お菓子を本当においしそうに食べる子たちで、それを観ているだけでつらかった(もちろん、成人していたらいいって話ではなくて。大人だけじゃなく子供を、堂々と「人間じゃないもの」扱いして、性のはけ口として消費していたことが本当に恐ろしいのだ)。

映画の中で、私が特に好きだったキャラクターは、拉致された先の満州でメインキャラの二人が出会う年上のお姉さん。彼女も「慰安婦」にするために連れてこられた女性の一人で、ひどい環境に置かれて性病になって苦しい思いをしているはずなのに、自分の分のお菓子を分けてくれて、いつも笑顔で明るい人。歴史の教科書で習う出来事からは犠牲になった人の人となりってなかなか見えてこないけど、こういう人たちがばたばたと犠牲になっていったんだって思うと、自分と「歴史」の距離がぐっと近くなる。誰かの「ふつうの生活」を自分たちの支配欲を満たすために奪う権利なんて、誰も持ってない。

この映画を観た後、歴史的な背景や現在の日韓関係の状況についてもう少し知りたいと思ったので、ずっと読もうと思いながら読めずにいた本を購入した。気になっていたテーマから、少しずつ読んでいこうと思ってる。

この↓本。

一橋大学で朝鮮近現代史を学ぶゼミの学生さんたちと先生がつくられた本で、日韓の間でモヤモヤと存在している様々なテーマについて、等身大の言葉で背景が説明されている。

 

目次はこんな感じ。

 

第1章 わたしをとりまくモヤモヤ
日本って全然寛容で優しい親切な国じゃない!?
推しが「反日」かもしれない‥‥‥
「韓国が好き」と言っただけなのに
なにが本当かわからなくて
コラム 韓国人留学生の戸惑い
座談会 日韓の問題って「重い」?

第2章 どうして日韓はもめているの?
韓国の芸能人はなんで「慰安婦」グッズをつけているの?
コラム マリーモンドと「少女像」
なんで韓国は「軍艦島」の世界遺産登録に反対したの?
どうして韓国の芸能人は8月15日に「反日」投稿するの?
コラム インスタ映えスポット 景福宮
コラム なぜ竹島は韓国のものだっていうの?
座談会 「植民地支配はそれほど悪くなかった」って本当?

第3章 日韓関係から問い直すわたしたちの社会
なぜ韓国人は「令和」投稿に反応するの?
コラム K-POPアーティストが着た「原爆Tシャツ」
韓国のアイドルはなぜ兵役に行かなければならないの?
コラム 韓国映画の魅力
日本人だと思っていたのに韓国人だったの?
コラム 戦後日本は平和国家?
座談会 歴史が問題になっているのは韓国との間だけじゃない?

第4章 「事実はわかったけれど……」,その先のモヤモヤ
K-POP好きを批判されたけど,どう考えたらいいの<? br>コラム 『82年生まれ,キム・ジヨン
ただのK-POPファンが歴史を学びはじめたわけ
韓国人留学生が聞いた日本生まれの祖父の話
韓国人の友達ができたけれど…
座談会 どんなふうに歴史と向き合うのか

(「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし Amazonの紹介ページより引用)


『雪道』を紹介されていたdia felizさんは以下のようにもツイートされていたのだけど、

『雪道』が発しようとしていたメッセージと、これらのツイート、『「日韓」のモヤモヤ…』本の「慰安婦」の項目で書かれていたことには、通じるところがあると感じた。

『雪道』は、もちろん「日本軍から暴力を受けた女性たちのことを風化させたくない」という目的があってつくられた作品だと思うけど、日本軍に拉致される以前から女性が不当に扱われている状況があったこと(息子は学校に行けるが娘は行けない家がある等)、現在も女性差別がなくなっていないこと(ほかに収入を得る手段がなくて水商売をしていた少女が見下される等)についても、丁寧に描こうとしていたと思う。「ある人が、その人の属性を理由に不利な立場に置かれるってことを、なくしたい」っていう気持ちって、普遍的に共有できるものだと思う。『進撃の巨人』を全部読んで苦しさやもどかしさを感じた人なら、共有できる気持ちだと思うんだよ…。

(ちなみに進撃の巨人、今アプリで全話無料キャンペーン中なので、途中まで読んで完走できてなかった私はこれ幸いと最近一気読みしたのである。途中から設定がちょっと入り組んでくるので、間を空けずに読むのがおすすめ。私は恋人と二人でiPadスマホにアプリを入れて数台のデバイスを駆使し読む技を使いました…。止まらなくなるから初めて読む人は覚悟してね…)

 

 

『「日韓」のモヤモヤ…』本の内容に戻ると、他にも、竹島軍艦島、兵役に関するところなどを少し読んだけれど、「これについて知らないで韓国に接するのは、恥ずかしいことだな…」と思うことばっかりだった。

(特に兵役について。韓国の兵役制度が始まったこと・維持されていることに、日本も一部関わっていることが書かれていて、そこに日本が関係してるとこれまでみじんも思っていなかった自分が申し訳なくなった…。韓国の兵役生活を描いた作品としては、Netflixのドラマ『D.P. -脱走兵追跡官-』とマンガ『フォーナイン~僕とカノジョの637日~』(とその続編『軍と死-637日-』)が、いずれもつらいけどおすすめ)

※ちなみに『軍と死-637日-』は今のところKindle Unlimitedでも読める。登場人物の背景とかを知ってから読むには、『フォーナイン』から読むのがおすすめではあるけど。


歴史について、勉強のためには、もう少しいろんな立場の人が書いた本も読んでみたいと思うのだけど、歴史修正主義じゃない「別の立場」の本って、見つけられるのだろうか…。