螘サンバカーニバル

けそのブログだよ

コンテンツ月記(令和四年、弥生)

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(これはタイで撮った写真。外国に行きたい…)

読んだもの、観たものを、書きなぐりのメモで記録します。完読できてないものも、書きたいことがあったらメモします。すでに長めのレビューを書いてるものや書く予定のものは、基本的に除いてます(…と言いながら、ここで書いてる感想も割と長いんだけど)。


更新日が3月になっちゃったので弥生号にしてるけど、主に2月の記録。ということで今月の「月記」はもう一本書けるといいんだけどなあ。

確定申告の作業をした日は仕事をする気力がなくて、映画をなにかと観ていた。文章を書くエネルギーが足らずにまったく感想が追い付いていないけどちょっとずつ書いていくよ…。

==評価基準(特に記載したいときだけ)==
\(^o^)/ 乾杯。愛。最高の毒なり薬。
φ(..) 特別賞(今後思い出すだろうシーン有等)
==ココカラ==

 

 

映画

ロブスター φ(..) 

私、ディストピアものに生じるユーモアが大好物なんだけど、それが味わえる映画だった。星新一作品に通じる雰囲気というか。

あらすじとしてはこんな感じ↓

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その世界では、独身でいることは許されない。

妻に別れをつきつけられた主人公も例外ではなく、彼はさっそくある施設に収容される。そこでは、45日以内にその施設の中で新しいパートナーを見つける義務が課されており、それが達成できなければ動物に変えられてしまうことになっていた。ただし、時折行われる狩りの時間に、施設から脱走した独身者を捕獲することができれば、一人捕獲するごとに一日ずつ猶予の日数が伸びる—。
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なぜかパートナーになるためには「共通点がないといけない」というのがこの世界のルールで、それがおかしかった(マッチするために無理やり共通点をつくる人が現れたりする)。たしかにマッチングアプリとかも、共通点を入口に出会わせるシステムになってるのが多いけど(外国には「嫌いなもの」を登録して、同じものが嫌いな人とマッチできる仕組みになってるサービスもあるらしい)、それが義務になっちゃうとなあ。違うことを受け入れることのほうが、誰かと付き合っていく上で重要だと思う。

もし私がこの世界に送り込まれたら、「この制度はおかしいと思ってるけど動物にされるのは嫌な人」と徒党を組んで契約結婚すると思うのだけど、意外にも無理やり誰かとパートナーとなるよりも動物に変えられてしまうことを選ぶ人がいて、そこが興味深かった。でも実際、「人間はくそだ。動物のほうがずっと賢い」って思ってる人は多いよね。この制度が実施されたら、映画で描かれているよりも「動物になるほうがいい」と考えてすぐに動物になっちゃう人が多いんじゃないだろうか。

脱走した側の独身者の集団も実はルールに縛られていて、そこがとっても皮肉。
監督の謎のユーモアが光っているダンスのシーン、最高だった。

あと、絶対入りたくない施設ではあるけど、男女それぞれに支給される制服がかわいかったな…。

 

 

あの日々の話 φ(..) 

つい、戦争の状況ばっかりTwitterで調べちゃって苦しくなってたので(私は季節の変わり目も気持ちが落ち込んで苦手なので…二重に食らっている…)ゲラゲラ笑えるものを観たくて観る(@アマプラ)。笑える作品だけど、どっちかっていうと「あーこういうことあったなあ…」って、思い出を掘り返される苦しさのほうがある作品だったかもしれない…。

ニュースレターをいくつか購読してるんだけど、そのうちの一つ、写真家の植本一子さんのレターで、この映画の監督(玉田真也さん)が率いている舞台が面白いと書かれていたので観ることにした。

(この書き方は正確じゃないか。玉田さんはもともと演劇畑の方で、映画も監督されてる、という感じなのだと思う、ご経歴を見る限り。どうやらドラマ版の『青野くんに触りたいから死にたい』の脚本も担当されるようだ。コロナ終わったら、そして収入が増えたら、舞台をもっと観に行きたいな)

植本さんのニュースレターはこちら(今のところ無料)↓

ichikouemoto.theletter.jp


あらすじはこんな感じ↓
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大学のサークルの代表選挙の日、二次会。
サークル御用達のカラオケで、深夜のテンションも手伝って盛り上がるメンバーたち。
人間が集まると、起きる化学反応は様々。
先輩後輩、女子と男子、恋愛経験を積んできた者と恋人がいたことがない者。
好いたり憎んだり、緊迫したり緩んだり、近づいたり疑ったり。
ゆらぐ人間模様を描く、ハイテンポ会話劇。
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すっごく不思議な感覚になる映画だった。
まず、この人たちの入ってるサークルが何かは最後まで全然わからない。この人たちが大学で何を勉強してるのか、とかも。
それこそカラオケで流れる映像みたいな…概念だけ抽出されたみたいな会話で構成されている。

でも、「わかる…わかる…こういう空気を私も知ってるよ…!」って思うところが多くて。
たいして年が変わらないのになぜかやたら「人生知ってます感」を出している先輩のたたずまいとか上下関係の謎ルールとか。自分のほうが「上手」だとわかったら急に偉そうになる人とか。若者の間に一人だけ世代が上の人がいるとき、互いに親しみを表明しようとするんだけどちょっと年上の人が「いじられて」しまって、残酷さが生じる感じとか…。


「あの時は真剣だったけど、後で振り返るとおかしかったよな…あれ…」と感じるような思い出の再放送的なシーンもいっぱい…(真剣に怒ってるときに、生じやすい現象。橋口亮輔監督作品でもよく扱われるユーモア(大好物))。


それぞれのキャラクターが絶妙なんだけど、特に素晴らしかったのは「邪悪なお調子者」造形だと思う。
(そりゃもちろん100%まっさらいい人ってのはいないし、それを期待するのも過剰だよね~とは思うんだけどさ…。いつもお調子者キャラの人のがっつり腹黒いところを見るのが、私は一番怖いのよ…)

女性の描き方も好きだったな!特にさおりさん!ここは譲れないって芯がしっかりある人で好きだった。

細かな会話のゆらぎが面白かったから、玉田さんの他の作品も観てみたい。

英国王のスピーチ φ(..)

U-NEXT の無料体験で、恋人のおすすめで観る。
恋人いわく「(主演の)コリン・ファースのこと好きになっちゃうから!」…たしかになった。苦悩するコリン・ファースのかわいらしさよ…!

(U-NEXT…高いけど入ってる作品は充実してるよね…『あのこは貴族』も入ってるもんな…←感想書けてないけど、あのこは貴族はとてもいい映画です!!!入ってる方や無料体験してみようって方はぜひ)

あらすじ↓
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英国王を父に持つヨーク公アルバートの悩みは、吃音があること。
大切な場になるほど、言葉がうまく出てこない。
彼の妻・エリザベスは、街の治療者でオーストラリア出身のライオネルに、身分を隠して治療を依頼する。
自分の吃音は治療できるはずがないと諦観からイライラしているアルバートは、ライオネルが対等な関係を築くためカジュアルな名前で呼び合おうと提案してくることにも腹を立てるが、あることをきっかけに彼の治療を受け入れることにする。
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史実を基にしているっていうのがすごいね!!歴史、それぞれの時代にたしかに存在していた人々の、人となりから掘り下げるほうがやっぱり面白い。王族とか皇族とかって、経済的に困ることはないとしても、民衆から監視されているし、自分の生きづらさを吐露するのが難しかったり生き方を選べなかったりするから、実はすごく苦しい宿命だよなって思う…。

私はフィクションでもノンフィクションでも「自分の悲しみを怒りでしか表現できない男性」が出てくると見入っちゃうんだけど(自分自身の(絶縁している)父親がそういうタイプの人だったので。私自身にもそういう面がある)、この映画の主人公・アルバートもそのタイプの人だった。そんな彼が自分の弱さをちゃんと弱さとして表現できるようになったことに、感動した。


戦争をはじめとする大きな歴史上の出来事、(特に現在に近づけば近づくほど)誰かが「みんなに偉いって思って欲しい」「自分は価値ある人間だって認めてほしい」「周りの人よりも優れた人だって褒めてほしい」って子供みたいな、だけど(だからこそ)切実な願いを権力を使って叶えようとしちゃうことが発端だったりするのでは?と最近考えている(ヒトラーとかトランプとか…プーチンもそうなんじゃないかな…)。そういう願いは自分自身の今の状態を受容できてないからずっと影のように付き纏ってくるものだと思うので、平和のために本当に必要なのは武力じゃなくてカウンセリングなんじゃないだろうか…。

あと、オーストラリアの歴史ってこれまで全然学んでみたことがなかったな…と気づいた。ちょっとずつ勉強していきたいな。

映画を観たあと、作品内でファム・ファタール的に描かれていたウォリス・シンプソンのことをWikipediaで読んでたら、事実は小説より奇なりを地で行く人で面白かった。

ja.wikipedia.org


あと、エリザベス妃(今のイギリス女王エリザベスのお母さんにあたる人)の描かれ方も好きだなと思って彼女のこともWikipediaで読んでたら(Wikipediaが好きなんだよね…必ずしも正確じゃないとしても読み物として…)、彼女もまた結構面白い人だった。

ja.wikipedia.org

 

 

マンガ


僕の心のヤバイやつ 1~6巻 φ(..)

中二病ど真ん中の少年・市川京太郎と、モデルをしているが食いしん坊の少女・山田杏奈の、端から見たらどう見ても両想いなのに全然付き合わない二人のラブコメ。世界の全てが憎くなったときでも、これを読んでる間は温かなもので胸が満ちる…。

会話の機微の描き方がうまいから、読んでいてくすぐったい。

例えば、二人で映画を観に行くってとこのこのくだり。


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(↑『僕の心のヤバイやつ』6巻より引用)


山田は…好きな人の目がよく見える席に移動したんだよね…。
でもそれを本人には言わないで一人で噛みしめているんだ…。
こういうシーンがいっぱい詰まったマンガなんだ、言葉だけじゃなくて、仕草や表情から「好き」が放出される、愛にあふれたマンガなんだ…。

ヒロインの山田もかわいいんだけど、とにかく主人公の京ちゃん(←主人公は姉からそう呼ばれている)がとってもかわいい!!


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(↑『僕の心のヤバイやつ』6巻より引用。普段、自分は周りのやつらとは違うと虚勢を張ってる京ちゃんが!いざとなるとこの顔!!)


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(↑『僕の心のヤバイやつ』6巻より引用。構われるのをうざいと思ってる一方、姉を頼っている素直なところがかわいい…)

10代の恋愛を描いたマンガ、最近は特に高校生を描いたものが多いと思うんだけど、中学生が主人公だっていうのが絶妙だと思う。たぶん高校生よりも、「子供であること」「大人になること」を考える時期だと思うから。山田と向き合う中で、だんだん京ちゃんが自分で自分を受け入れようとしていくところもとても素敵。徐々に、自分や他人の感情を豊かに理解できるようになっていくんだよね…。山田も京ちゃんも、相手が自分自身を肯定するための声かけをするようになっていく(恋愛関係には「自分がいないとあなたはだめだ」って依存させて成り立っちゃってるものもあるけど、二人はそれとは真逆の関係)から、巻を追うごとに胸にずっしり来る。6巻は特に!!よかった!!(もちろんそこに至るまでの過程がよかったんだけど)


しかしちょこちょこ、うーんと思う点もあり…。
特に気になってるところは、下ネタについて。
中学生の性欲についてもちゃんと描きたいという方針を作者さんはお持ちのようで(インタビューでそういうことを話されていた)そこについてはもちろん否定しないんだけど、性暴力の話題もごっちゃにしてキャラクターたちが話しているのが!!どうしても怖かった。
リアルな中学生像を描きたいって気持ちはわかるんだけど、「性暴力のことも笑い話にする」っていうのをわざわざマンガで再放送しなくていいと思うの…。全然違うことだから…。

キャラクターたちの内面の掘り下げが進んでいくにしたがって「うーん…」なところは減ってきつつあるのだけど、そこはどうしても笑ってスルーできないところだから書いておくよ。

脇を固めるキャラたちもとても素敵なので、ぜひ~。私は京ちゃんのお姉ちゃんが好きです(京ちゃんちも山田の家も、家族が素敵ですごく羨ましかった涙)。

冒頭数話と最新の数話はWebで読めるよ↓

mangacross.jp

 

一応コミックスも貼っておくよ↓


山田、どんどんかわいくなっていくんだけど、私は4巻の表紙が特に好きだよ。


作者の桜井さんがTwitterで描いてたおまけマンガ的なのをご自身でまとめた無料Ver.もある。できれば本編読んでから読むほうが楽しめると思うけど、これだけ読んでも二人の関係性をニヤニヤ楽しむことはできるよ。

 

タコピーの原罪 φ(..)

ちょいちょいTwitterで話題になってるな~と思っていたところ、今のとこ最新話までWebで全部読めることがわかったので一気読み。
雑に言うと「とっても暗いドラえもん」みたいな話。設定はそんなに新しくはないかもしれないけど、絵が魅力的で続きが気になるマンガ。

あらすじ↓

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ハッピー星から地球にやってきたタコピーは、ハッピーを広めるために地球に降り立った。
お腹が空いて困っていたところ、くたびれた様子の一人の少女・しずかちゃんにパンをもらって助けられる。お礼に、星からもってきた不思議な力を持つ「ハッピー道具」を披露してみるけど、しずかちゃんは興味がなさそう。
どうにかしてしずかちゃんを笑顔にしようと、タコピーは奮闘するのだけど…。
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しずかちゃんを取り巻く人間関係、みんな悲しい思いとそこから生じた怒りを抱えて生きていて、タコピーのハッピー道具がまったくハッピーに使われない。


ハッピー道具に対する子供たちの目が、時代の空気を反映している気がして悲しかった。もちろんドラえもんの頃だって、誰か一人の救世主や、素晴らしい道具によって全てが解決したわけじゃない(ドラえもんがいたって、のび太はずっといじめられっ子だ)。でも、「もしかしたら自分にもいい未来が来るかもしれない!」と信じてみることすら、難しくなっちゃったんだな、と…。
(いや、違うか…。いつだって絶望していた子供はいたと思うけど、やっとそういう子供にもスポットライトが当たるようになった、ということなのかもしれない)

 

この先の展開について、私は、タコピーが目指している「ハッピー」の内容がはっきりしてないからそこが怪しいと思って読んでるんだけど(地球人の「ハッピー」と一致しないんじゃないかと思う)…どうなるのかな?Twitterで「聖書モチーフの描写がちょくちょく入ってる」と指摘があったが(そもそもタイトルがそうだよね)…この先も聖書をなぞっていくのだろうか?

私の恋人(マンガの作り方に詳しい)は、作者のタイザン5さん(すごいペンネームだ)はもともとアニメーター志望だったんじゃないか?って言ってた。『タコピーの原罪』は、両目の開き方が違うっていう人物がよく描かれてるんだけど、それは人間がある行動からある行動に移る、その間の瞬間を描いてるからなんじゃないか?と。面白い指摘。

(アニメを作るとき、その、間の部分を描くことを「中割り」というらしい。この記事に説明が書いてある↓)

tips.clip-studio.com


ジャンプ+で読めるよ~。


コミックスも一応貼っておくよ(3/4発売)↓

 

タイザン5さんの読み切りを何本か読んで、あえて絵を崩して今の画風に至ったであろうこともわかった。


↓このときの絵は、タコピーよりもかっちりしてる。いい話だけど何かちょっとものたりない感じ…。

shonenjumpplus.com




↓この話は上のよりも後なのかな?かなりタコピーに近い作風になってる。こっちの作風の方が好き。

shonenjumpplus.com