螘サンバカーニバル

けそのブログだよ

コンテンツ月記(令和三年、霜月)

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最近Blender(無料で使える3Dモデリングソフト)で3Dをいろいろ練習している…ずっとそればっかりやっている…こちらは初期につくった謎の鉄の球

このテーマだけ(たぶん)、note時代から引き継いで書きます。
(「コンテンツ」っていうと商業的なにおいがするなあと思ってタイトル変えようと思ったけど、いいのが思いつかず)

 

読んだもの、観たものを、書きなぐりのメモで記録します。完読できてないものも、書きたいことがあったらメモします。
すでに長めのレビューを書いてるものや書く予定のものは、基本的に除いてます(…と言いながら、ここで書いてる感想も割と長いんだけど)。

紹介したいものがいろいろあるんだけど、とりあえず今回は映画の話。

 

==評価基準(特に記載したいときだけ)==
\(^o^)/ 乾杯。愛。最高の毒なり薬。
φ(..) 特別賞(今後思い出すだろうシーン有等)
==ココカラ==

 

 

映画

JUNK HEADφ(..)

TBSラジオアフター6ジャンクションで紹介されているのを聴いてから、ずっとずっと観たかった作品だったんだけど、コロナの影響でなかなか行けなかったんだよね…。
途中ちょっとうとうとしてしまったが…、それでもスクリーンで観られて嬉しかった。


あらすじ(公式サイトより引用)

環境破壊が止まらず、もはや地上は住めないほど汚染された。人類は地下開発を目指し、その労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。それから1600年──遺伝子操作により永遠と言える命を得た人類は、その代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していたマリガンの調査を開始。政府が募集した地下調査員に、生徒が激減したダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る。今、広大な地下世界の迷宮で、クセ者ぞろいのマリガンとの奇想天外な冒険が始まる!

 

なんといってもこの映画のすごいところは、本業は内装業だという堀監督が、映画独学で、途中まで一人で製作していた、というところだ。そういう、創りたいという気持ちが爆発している人の存在、私はそれだけで感動してしまうんだよな…。

↓一人でこんなの創れるって…。

 

youtu.be


まず、無機質な世界(大型商業施設の駐車場みたいな色味と質感の空間が続く)が、もう大好きだった。その割に、妙にコミカルな空気感で、ギャップが愛おしい。時々変なギャグを、変な間合いでぶっこんでくるんですよ、監督は。
キャラクターで言えば、私は特に、黒い3人組が大好きです。

↓この人たち。もぐらをイメージしたマスクなのかな?アレクサンドルー!

 

youtu.be


さて、なぜうとうとしてしまったかというと…ちょっとね…ちょっとストーリーがぬるかったんだ…!特に後半。ちょっと無理やり、畳みかけるような展開だったなーと思って、もったいなく感じた。
ストップモーションアニメと言えばライカもそこが気になる点だと感じる。技術はとんでもないのに、ストーリーの求心力が弱くてちょっと話題になりきれない感じだなと…。

でも正直、この映画においてはそこはどうでもよかったのかもしれない。監督にとっては、「できることをなるべく自分でやって映画を創りあげる」ことがきっと目標だったのだと思うから。一緒に観に行った恋人と、「たぶん監督は、エンドロールのほとんどに自分の名前が書かれてるっていうのをやりたかったんだろうね」という話をした。編集や原案や照明なんか以外にも、音楽や声優まで堀さんがやってる。すごい。自分の創りたさのために、こんなに情熱を注げるって、すごいなあ…。

左右じゃなく上下方向に移動している電車があることなど、細かな設定も好きだった。

 

メイキング動画もいくつかYOUTUBEにあげられてるけど、どれも面白い!↓

 

youtu.be

 

まともじゃないのは君も一緒 φ(..)

アマプラに来ていたので、観る。
思っていたよりもずっとずっといい映画だった。
伝えようとしているメッセージも素敵だし、コメディとしてばっちり面白くておすすめ!

あらすじ(公式サイトより引用)

外見は良いが、数学一筋で〈コミュニケーション能力ゼロ〉の予備校講師・大野。
彼は普通の結婚を夢見るが、普通がなんだかわからない。​
その前に現れたのが、自分は恋愛上級者と思い込む、実は〈恋愛経験ゼロ〉の香住。​
全く気が合わない二人だったが、共通点はどちらも恋愛力ゼロで、どこか普通じゃない、というところ。​そして香住は普通の恋愛に憧れる大野に「もうちょっと普通に会話できたらモテるよ」と、​あれやこれやと恋愛指南をすることに。​​

香住の思いつきのアドバイスを、大野は信じて行動する。香住はその姿に、ある作戦を思いつく。​大野を利用して、憧れの存在である宮本の婚約者・美奈子にアプローチさせ、破局させようというのだ。​

絶対にうまくいくはずがないと思っていたが、​予想に反して、少しずつ成長し普通の会話ができるようになっていく大野の姿に、不思議な感情を抱く香住。
ある時、マイペースにことを進める大野と衝突した香住は「もうやめよう」と言い出す。すると大野は「今変わらないと、一生変われない。僕には君が必要なんだ!」と香住に素直な気持ちを伝える。​

初めて誰かに必要とされた香住は、そんな大野の言葉に驚き、何か心に響くものがあり、​初めての感情に「これって何!?」と悩み始める。
二人の心がかすかに揺らぎ始めた時、事態は思わぬ方向へと動き出す。二人が見つけた《普通》の答えとは?​

 

ということで、「普通」がテーマになっている映画。

結構繊細なテーマだったと思うけど、バランスよくまとめられていて、配慮があったぜ…。
どういう風に繊細かっていうと、大野の「普通じゃなさ」がたびたびギャグシーンとして扱われてるんだけど(例えば大野は、予備校の生徒に好きだと言われて、「定量的に」どう好きか聞いたりしてしまう←この描写は、もしかしたら発達障害がある人として描かれてるのかもしれないな、と思いながら観た)、こういうことをただ「普通じゃなくてうけるね」って見せ方で終わらせなかった。

特に印象的だった大野のエピソードが二つある。
一つは、「僕には普通にできないこともあるけど、君ができないことで僕にできることもある」というような話を香住にするところ。私も「(きっと一般的に共有されてる情報だと思ってたのに)そこから説明しなきゃいけないのかー…」って人に思っちゃうこと、時々あるけど、私がその情報を知るのに使った時間で、その人は別の情報を得てるわけで。世界が全員私みたいだったらコミュニケーションは楽になるけど、私が苦手なことを得意だって人が世界から消えちゃう。「前提として持ってる知識」なんて、ほんとは人によって全然違う。
もう一つのお気に入りのエピソードは、作品の山場だと思うから内緒にしておこう。

みんなそれぞれに「普通じゃない」ところがあるから、世界は発展していくし、補い合って社会をつくれるんだっていうまっすぐなメッセージ…!


わかりやすい恋愛マーカー(キスするとか)で盛り上げてないところもかなりよかった。心の交流を丁寧に描いた作品。

俳優陣は皆さん素晴らしい演技だったのだけど、まあ、成田凌氏のすごさよ!話し方のスピードのコントロールや、手の動きなど、まるで違う人みたいだった。すごいなあ…。ぺらっぺらのウインドブレーカ着ててもかっこいいところもすごかった。リアルなバランス(こういう人いるよね…という)。美奈子役の泉里香さんも、幸薄そう&ふと見せる色気が最高でした。


くれなずめ φ(..)

※若干ネタバレありの感想です、注意!

成田凌出演作を観ようキャンペーンその2。出演している俳優陣から考えるとよくないわけはない…と思っていたけど、予想以上に素敵な映画だった。あと、最初に思っていたよりはちゃめちゃなところもよかった。こちらもアマプラに来てます。


あらすじ(公式サイトより引用)

優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)、高校時代の帰宅部仲間がアラサーを迎えた今、久しぶりに友人の結婚式で再会した! 満を辞して用意した余興はかつて文化祭で披露した赤フンダンス。赤いフンドシ一丁で踊る。恥ずかしい。でも新郎新婦のために一世一代のダンスを踊ってみせよう!!
そして迎えた披露宴。…終わった…だだスベりで終わった。こんな気持ちのまま、二次会までは3時間。長い、長すぎる。そして誰からともなく、学生時代に思いをはせる。でも思い出すのは、しょーもないことばかり。

「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな
   なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも。」

そう、僕らは認めなかった、ある日突然、友人が死んだことを─。


ということで早速一部をネタバレしちゃうんだけど…、この映画「死んでしまったキャラクターが、何もなかったようにそこにいる(特に透けたりもしてない、触れるしみんなから見える)」という、驚きの設定で進んでいく。そこがまず、すごく新鮮だった。

「幽霊が自分が死んだと気づかないで話しかけているが、実はその言葉はほかの人には届いていなかった」みたいな設定はよくあると思うけど、ほんとに、ただそこにいる。死んでしまったキャラがあることを打ち明けるという出来事のあと、「えっ、これが心残りだったんじゃないの?まだ成仏しないの?ふわーーんって」とか、友人からつっこまれるという…!それでみんなで胴上げしてみて(高い所に体を置くことで)成仏しないかたしかめてみるけど、やっぱり成仏しなかったりして…。

で。そういう斬新なコミカルシーンも、実はちゃんとこの作品のメッセージに肉付けしてて。

この作品は、「きっぱり白黒つけられない、それが人間じゃん。それを無理やり割り切らなくていいじゃん!」ってことを叫ぼうとしてた。亡くなった人のことを「引きずることから逃げんじゃねえ」ってセリフが印象的だった。コミカルなだけ・シリアスなだけの映画じゃない。現実だけ・非現実だけの映画でもない。
そんな、ね。一つ気になったことが解消したからハイ成仏します、って、感情はそんなに単純なもんじゃないよね。すべては複雑なのだ、曖昧なままで生きよう!(あるいは死のう!)そもそも、『くれなずめ』ってタイトルだものね(公式サイトでは、「くれなずめ」という言葉が「日が暮れそうでなかなか暮れないでいる状態を表す「暮れなずむ」を変化させ、命令形にした造語」と説明している)。

TBSラジオアトロクの映画評で宇多丸さんも触れていたように、ホモソーシャルなノリに「うっ」となるところも時々あるんだけど、映画のテーマから考えると、彼らのこのノリはもう「暮れかけている」ものだとも考えられるかな、と。それを全肯定するようには描かれていなかったと思う。

中心の6人もそれぞれに愛しくてそれぞれに丁寧な見せ場があるのだけれど(特に藤原季節さんの後輩役がもう…愛しすぎて…!)、脇の役者さんたちもまたよかった!キレてる前田敦子さん、スクールヒエラルキーのトップ感を絶妙に体現してる城田優さん、特にナイス。


日常生活の、ほんとうにどうしようもない瞬間の美しさを、楽しくエネルギッシュに閉じ込めてる、そんな作品で、誰かの思い出を見せてもらってるみたいだった。それでぼんやり立ち上ってくる自分の記憶に、また少し泣いてしまった。

 

聖なる鹿殺し

同じ監督の『女王陛下のお気に入り』がずっと観たいのだけど、私が契約してる動画配信サービスのサブスクの範囲にないので、少し前のこの映画を観てみる(こちらはアマプラに入ってる)。美術面はかなり好きだったのだけど(奇妙なカメラワークとか出てきて新鮮)、ストーリーは難解だった。神話っぽい話。

あらすじ(公式サイトより引用)

心臓外科医スティーブンは、美しい妻と健康な二人の子供に恵まれ郊外の豪邸に暮らしていた。スティーブンには、もう一人、時どき会っている少年マーティンがいた。マーティンの父はすでに亡くなっており、スティーブンは彼に腕時計をプレゼントしたりと何かと気にかけてやっていた。しかし、マーティンを家に招き入れ家族に紹介したときから、奇妙なことが起こり始める。子供たちは突然歩けなくなり、這って移動するようになる。家族に一体何が起こったのか?そしてスティーブンはついに容赦ない究極の選択を迫られる・・・。


「何やら不気味な神的な若者」って役回りはいつも女の子ばっかりに与えられるよねー(不服だなー←そのパターンが多すぎると「女の子は尊いと思うんですよ」っていう、結局人間扱いしてない差別だと感じる…)と思っていたけど、この映画では男の子がそういう役回りで、珍しかった。同じような理由で、「子供は天使で聖なる存在」って考え方が私は嫌い(それは「だから汚い気持ちは持たないでね」って子供に圧かける原因になったり、子供の感情を見逃す原因になったりすると思う)んだけど、この映画は子供の描き方も容赦ないので、ある意味で誠実でよかった。タイトルに反して、子供だろうが女だろうが、誰も聖なる存在として扱わない。

 

冒頭で書いたように、ストーリーはわからないところも多かったのだけど、わが恋人が町山智浩さんの解説を買ってくれたので、ようやくちょっと物語面での楽しみ方もわかるようになった。これを聴くと、この映画が突然悲しいものに思えてくる。
映画に影響をたぶん与えてるんじゃないか・・・?って絵画についても話されていて、なるほどー!と思ったよ(紹介されてた絵画、どれも好きな作品だったんだけど、映画を観てるあいだは全然気づかなかったな)。

tomomachi.stores.jp


解説を聴く前、私なりに考えてみたこの映画のテーマは「家父長制」、「男の罪の連鎖」。だから、まだ大人になっていない男の子たちを「聖なる鹿」と表現しているのかな?(鹿の角は男性的な象徴だと思うので)と予想していたけど、「聖なる鹿」の出所はまた違うところだった(予想したテーマ自体は、そんなに的外れではなかったと思う)。

 

町山さんの解説の中でも触れられていた、スパゲティのシーンが印象的だった。
マーティンがスパゲティを食べながら、「僕のこのスパゲティの食べ方、(亡くなった)親父さんにそっくりだねって周りの人たちが言ってたんだ。だけど、あとで僕は誰もがこの食べ方をしていると気づいた。そのとき、父親が死んだときよりも悲しかった」というようなセリフを言うシーン。この、「他人同士なら共通点だと思われないような点も、親子だから、まるで似ているように感じてしまう(自分も他人も)」って話は、すごくわかる…。人生の行く先までトレースしてしまうんじゃないか?っていうこととか。まるで運命みたいな顔をして、追いかけてくる妄想(でも本当は、運命じゃない)。

 

この映画を観たこともあって気づいたのだけど、私は男の人にその人自身の男親への思いを聞くのが結構好き。まずそういう話をしている人がすごく少ないんだよね。その人のコンプレックス(や攻撃性)の核に触れられるからかも(だからこそ、危うい話題でもある)。