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ピクサーの女性たちと、お調子者のメイメイ:『私ときどきレッサーパンダ』の感想

私ときどきレッサーパンダ (ディズニー・プレミアム・コレクション)

(お腹のところの毛が、ほかの部分よりふさふさしてるのが愛しいんだよな…)

 

1か月、Disney+が安く契約できるキャンペーンをやっていたので、最近はディズニーとピクサーの作品をめちゃくちゃ観ている。
今日紹介するのはそのうちの一つ、『私ときどきレッサーパンダ』。

(ディズニーは性差別的な議員に献金してたり、クィアな登場人物が出てくる企画を通すのに難色示しがちだったりするしピクサーは(性加害を摘発されて会社を離れた)ジョン・ラセター氏はじめ、会社ぐるみで性加害的だったことが明るみになったりってことがあって(※1)会社全体にお金を入れたくない気持ちはあるんだけども…。でもドミー・シーさん(『私ときどきレッサーパンダ』の監督』とか、応援したいクリエイターがいるので、いろいろ観てる。応援したい人たちに直接課金できたらいいのに!!!)

(※1)この記事は英語だけど、DeepLとかで訳して読んでも意味が取りやすい。記事ではピクサーの元従業員の女性の証言が紹介されているんだけど、もうつらくて。
この女性が働いていた頃(2009年から2014年)、ラセター氏が望まぬハグや身体へのコメントをしてきたのみならず、「ラセター氏は若い女性がそばにいると自分をコントロールするのが難しい人なんだよ」と他の社員がラセター氏を擁護して彼女を会議に出させなかったり、リーダー的ポジションにいた女性スタッフの評価が(チームで一緒に働いた人たちが否定したとしても)低くされていたり、化粧をしてこない女性社員が陰で男性に悪口言われていたりしたり…ということが書かれている。これまでどれだけ、ピクサーで働く女性たちは戦ってきたのか。もちろん男性たちの全部が性加害的だったとは思わないけど、こういうおかしな文化と一緒に戦ってくれる人はどれだけいただろう(『プロミシング・ヤング・ウーマン』のことを思わずにはいられない)。(主に)子供に夢を届けよう!って作品をつくってる会社でこんなに女性が差別されてるって、どんな悪夢なんだよ…。

 

『私ときどきレッサーパンダ』の話に戻りまして、あらすじ。↓

舞台は1990年代のカナダ・トロントのチャイナタウン。そこに暮らすメイは伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、母親の期待に応えようと頑張る13歳の女の子。
でも一方で、親には理解されないアイドルや流行りの音楽も大好き。恋をしたり、友達とハメを外して遊んだり、やりたいことがたくさんある側面も持っていた。そんな、母親の前ではいつも “マジメで頑張り屋”のメイは、ある出来事をきっかけに本当の自分を見失い、感情をコントロールできなくなってしまう。悩み込んだまま眠りについたメイが翌朝に目を覚ますと…なんと、レッサーパンダになってしまった!
この突然の変身に隠された、メイも知らない驚きの〈秘密〉とは?一体どうすれば、メイは元の人間の姿に戻ることができるのか?ありのままの自分を受け入れてくれる友人。メイを愛しているのに、その思いがうまく伝わらずお互いの心がすれ違う母親。様々な人との関係を通してメイが見つけた、本当の自分とは――。
(Disney+の作品紹介ページより引用)


最近恋人と『歴代アカデミー賞(作品賞)受賞作を全部観ていくプロジェクト』もやってるんだけど(プロジェクトっていうか、ただ観ている。笑)、さかのぼっていくにつれて「まーじで過去の(主に)アメリカ映画って、白人の人(特にシスヘテロ男性)ばっかり出てくるな!」ってことが気になってきていて。これが「ふつう」だと思って違和感覚えずに観てたのが、やっぱり異常だなと…。

この映画の主人公メイメイ(←愛称)は、中国系カナダ人の、とびきり美女でもなければとびきりのスタイルでもない女の子(足が太いところがいいんだよね。そうだよ、そういう人もいるよ、人間だもの!という気持ち…。作品背景を語っていたドキュメンタリーによると、目の左右の大きさが微妙に違うとか、ほくろがあるとか、生きてる人間にある特徴を、この作品のキャラデザではなるべく取り込もうとしたとのこと)。彼女はいわゆる優等生キャラなんだけど、同級生の仲良しの間ではオタクのお調子者で通ってて。目の前にいる人によって見せるキャラを変えるって実在の人物では当然あることだけど、「マイノリティ」のキャラだとあまりそこが描かれないことも多い。「アジア系」の「女の子」が、ちゃんと複雑な人間・多面的な人間として描かれていることが、まずすごく嬉しかった。

そして演出とギャグの質が、とても高くて面白かった。倫理観が信用できてかなり面白い作品、っていっぱいないからさー…面白かった以上に嬉しかった。

(私が観てきた限り)ピクサーの作品に共通する特徴として「物語の登場人物と自分の感情の上がり下がりのグラフと、音楽や映像などの演出のテンション、三つがばっちり一致するときの気持ちよさ」があると思うんだけど(これがうまくいってない作品だと、「画面の中は盛り上がってるっぽいが私はついていけていないぞ…置いていかれた」という気持ちになる)、本作は特に音楽の使い方がアガる!かっこいい音楽が、ここで来てほしい、ってタイミングで大波のようにばっしゃーんと来るので爽快だった。中国の伝統的な文化(っぽさ)と、北米的なポップカルチャーをそうやって絡ませるのね!?という新鮮な演出もあり。

ギャグで言えば、主人公の友達3人のふざけたテンションが私はすごく好きだった。特に好きなのはアビー。変な顔と変なポーズばっかりしていて、愛しい。プリヤが、基本的にクールな人だけど時々おふざけ感を出すところも、人間らしくて好きだったな。(あとミリアムの、緑のチェックのアウターに白黒市松模様のスリッポン合わせるところが、いかにも中学生っぽくてこれもよかった笑)

舞台は1990年代なので、その時代の「懐かしい~」って感じと、今っぽさがうまくミックスされているところもよかった。
90年代ぽさで言えば、私とドミー・シー監督は完全に同世代なので「こういうの、見覚えある!!」ってものが多すぎた。たとえば虹&雲のモチーフやペガサスのモチーフ、メイメイが履いている暖かそうだけどださい厚手のレギンスや、メイメイの友達(アビー)がしているラメのヘアバンドなど笑。ちなみにドミー・シー監督は日本のアニメも好きらしく、おねだりするときキャラクターが目をうるうるさせたりとか、かなり日本の昔の2Dアニメ風演出があって、そこもかわいらしい。(Disney+に入ってるドキュメンタリーでは10代の頃の監督が描いた「(ハリーポッターの)マルフォイの子供」というオリキャラのイラストが公開されていて、そのあたりの若干黒歴史っぽさにも親近感を覚えた笑)
今っぽさについて言うと、とにかくスピーディ!一緒に観てた恋人が「最近のYouTubeの編集のスピード感だね」と言ってたけど、切り替えが多い&速すぎて観始めて最初のほうはついていくのが少しきつかった…(だんだん慣れたけど)。ストーリーの中の核になる「推し」文化の描写も、1990年代のそれというよりは今っぽさが色濃い気がした。メイメイの母方の親族が見得を切るシーンが何回かあるんだけど、そこのキャッチ―さにも私は心を奪われた(ので、ぜひ注目してみてください)。

 

ストーリーとしても、ピクサー作品でよく取り上げられる(気がする)「成長とは喪失を伴うものだ」っていうテーマが、少し切なく扱われててよかった。親子の話についても、喪失を味わうのはどちらかだけじゃなく、両方で。子供にとっては、親っていうのが「神」でも「すべて正しい人」でもなく、ただの人間だとわかってからが、大人の始まりだよね…。親はいつか、子供が一人の人間で自分とは違う価値観で生きている人だと知って、その違うところが大きくなっていくのを見守る存在だから、どうしても切なくはなるよね…(私は誰の親ではないけども。あとこれに気づけない(気づこうとしない)親はいるけども←問題点はあるけど『死ぬほどあなたを愛してる』という、代理ミュンヒハウゼン症候群を扱ってる映画がこのテーマについて考える上ではおすすめ)。

と、おすすめポイントはいろいろあるんだけど、「今年観た映画ベスト10に入るねレベル」かっていうとそこまでではなく…。今とても必要な物語だと思ったし、勢いがすごく好きな作品だったんだけど、ファンタジーシーン(主に竹林のシーン)に、リッチさがもう少しあったらもっとよかったなー、そこが惜しかったんだよなー。私がピクサーの映画で特に「面白い!」って思うところはそういう点なので(この映画は従来のピクサーらしさの枠を出ることを目指していたようなので、こんな感想は無粋かもしれないけど)。画面を一時停止してじっくり観たい仕掛けがほしいというか…(たとえば、『インサイド・ヘッド』の空想世界のデザイン、みたいなところ)。しかしピクサー、過去に女性が制作のトップのほうにいたときに、スタッフを増員してほしいと要求しても通らないことがあったりしたと最初のほうに貼ったウェブの記事で読んだので、今作ももしかしたらそういう事情が絡んでるのかもしれない…。邪推ですが。

前のほうでも少し触れたけど、Disney+にはこの作品の制作に関わった女性たちの声を紹介するドキュメンタリーも入ってるので、こちらもあわせて観るのがおすすめ。前述の記事で綴られていた、ピクサーの「男社会」な風潮で女性たちが苦しんできた背景とかを読んでから考えると、『レッサーパンダ』もドキュメンタリーも、観たとき残るずっしり感が違う…。私はこれまで、ピクサーって上下関係なく意見が言いやすくて、誰にとっても理想的な職場だと漠然と思ってたから、上に貼った記事を読んでなおさらがっかりしたんだよね…。この記事を読んだ上で他の作品のメイキング的ドキュメンタリーを観ると、ちょっと女性たちが萎縮して見える。本当に言いたいこと言えてるのかな、「女性も活躍してますよPR」に使われちゃってないかな…と心配になる。


この作品のドキュメンタリーでは、出てくる女性たちがみんなリラックスして笑ってるように見えて。だから、メイメイみたいな、表情豊かで多面的な女の子を丁寧に描けたんじゃないか、って思って。作品単体としても、世界の現在地としても、嬉しい気持ちになって観終える作品だった。

 

ずるい君の気持ちが、わかるよ:漫画『ちはやふる』の感想

ちはやふる(28) (BE・LOVEコミックス)

 

今日取り上げるのは、今更扱うのは無粋感もりもり…な、超有名かるた漫画、『ちはやふる』です。

今更…なんだけど最近最終回が公開されて、その近辺の48時間だけ既刊が無料開放されていたのでここしかねえ!と思って一気読みしたのでした。前にnoteでもちょっと感想を書いたことがある(気がする)んだけど、最後まで読み終えた今、この感動を残しておきたかったんだ…。今年どころか生涯ベスト10に入る漫画だったから…。深夜3時くらい、「眠いからここまで読んだら寝よう…」って思って読んでた巻が良すぎて、深夜なのにぼろっぼろに泣いて興奮して目がさえちゃったからね!!!(深夜は寝ろ、私)

それまで、7巻の内容まで漫画アプリ(マガポケ)で読んでたんだけど、「ここから40巻以上も読むのはきつい」と思って一回追うのを中断していた。しかし無料期間中、一気に34巻まで読み、期間終了後は最新巻(49巻)まで自腹で買って、さらに最終話までアプリで単話購入して読み切った!!(すごい体力が必要だった!!)

一気読みは大変だったけど、一気読みして良かったなあ、と思う。後ろに行くほど、一つの試合が丁寧に長く描かれていたから、一気に読まないとその「時の流れ」や「勢い」を追えない気がする。一気に読んだことで、過去の出来事(やセリフ)と今の出来事(やセリフ)の関連も新鮮な頭で気づけた。
かるたの文化としてもキャラクター個人としても、「歴史」や「積み重ね」を大事にしている漫画だったから、過去にあったことがどう今につながっているか忘れずに読めたほうが、ずっと感動が深まると思う。


この漫画のおすすめポイントはいろいろあるんだけど、改めていくつか書いてみる。

 

おすすめポイント1:世代から時代から立場から、とにかく視野が広い

この作品で扱われるテーマは「競技かるた」。


主人公のちはやは(小学生編もあるけど作中のほとんどで)高校生で、地域のかるた会と学校のかるた部に所属している。よく宣伝に使われるのは(たぶんキャッチ―だし伝わりやすいから)「かるた部」の面で、だから「高校生青春漫画」だと思ってる人が世間にはおそらく多い。それは間違いじゃないんだけど、その部分はこの漫画のあくまで一部で。

 

この漫画には、かるたにかかわる、老若男女いろんな人が幅広く描かれている。

若い学生の選手だけじゃなく、出産を経て復帰しようとしている選手も、一番体が動く時期は過ぎてしまったと感じている中年の選手も、これから世界を知っていくような小さな小さな選手も、描かれている。

選手だけじゃなく、学生選手を指導する大人も、札を読む人も、かるたを作る会社の人も、選手の生活をサポートする人も、描かれている。

 

それだけでも素晴らしいことだと思うけど、作者の末次さんはかるたをやれるという「老若男女」は「誰でも」とイコールじゃないってことにも、踏み込んでいく。

 

描かれるのは今のことだけじゃない、前の世代が積み上げてきた歴史のことも、そしてかるたが歌としてつくられた時代のことも、丁寧に取り扱われる。

 

だから、現在十二分に大人の人が、「今、高校生青春漫画を読んでもたぶん感情移入できないだろうしなあ」と思ってこの作品を読むことを選択肢からはずしているとしたら、それはすごくもったいない。いろんな世代の、時代の、立場の、たくさんのキャラクターがいろんな感情をめいっぱい動かして生きている漫画だから、青春漫画はちょっと…な人にもぜひ読んでほしいと思う。

 

おすすめポイント2:群像劇としての完成度がとんでもなく高い

まず作者の末次さんは、「いい子(人)じゃないけど、愛しくなっちゃうキャラクター」を描くのがとてもうまい。

相手に褒め言葉をもらうために、わざとそれを導くような自虐を口にしちゃうキャラクター、プライドが高くて人に頼るのが苦手で嫌みばっかり言っちゃうキャラクター、同じ「初心者」だった友達が自分より先に進んでいくのを見て、苦しくなって怒って逃げちゃうキャラクター…。

「そういう気持ちわかるよ」って思うこととか、「ああ、こういう人、私の人生にもいたな」って思うことがたくさんある。みんな、本当に生きている人だ、って感じる。私はけっしていい人じゃないからさ…ずるかったり、コンプレックスのせいで素直になれなくて人を傷つけたりする登場人物たちのことが、まったく他人事に思えなくてさ…。そんな人たちが少しずつ前に進むところが描かれていて、「人生のこんなに大事な瞬間を見せてもらっていいんですか!?」って何回も思いながら読んだ。


一人ひとりがただでさえ魅力的なキャラクターたちなんだけど、その関わり方・化学反応の起こり方が、複雑かつドラマティックで、そこにもとんでもなく感動させられてしまう(私は矢印入りの人物相関図を書いたら複雑になりそうな話が好きなのだ、お互いの呼び方とか話すときの緊張感とかが、それぞれの人物間で細かく違っているような話が)。「この人たちが話しているところをもっと見ていたいな」って思う物語は、そんなに多くないから貴重だ。

世の中には物語のために無理やりキャラクターを動かしている作品もあるけど、この作品は、それぞれキャラクターが自分の信念や守りたいものを持って生きてて、誰かの言動に良くも悪くも動かされて変わっていって、それをただ描いている。そこがすごく好き。


特に心惹かれたのは、「かるたはつらくて好きじゃないけど、かるたをしていないとかかわれない人や知れない感情があるからかるたをやってる」、あるキャラ。「楽器はつらくて好きになれないけど、音楽をやってないとかかわれない人や知れない感情があるから吹奏楽をやってた」私は、共感しまくってべそべそに泣いた。好きなキャラクターは枚挙にいとまがないけど(登場人物めちゃくちゃ多いマンガなんだけど、それぞれのエピソードがよくてみんな大好きになっちゃうんだよね!!!)、このキャラへの思い入れには特別なものがある。

…と、ここまでべた褒めに褒めてきたんだけど、一部気になるところもあって

残念ながらそこのマイナスは結構大きかった…。

具体的には、ジェンダー観が悪い意味で保守的なとこがあったり(例えば女性と美をセットで結びつけるとことか、特に前半セクハラギャグが結構多いこととか。女性選手、かるた界で実は差別されてるのでは?って話とかを後半でしているから、なおのことこういうとこが気になったよ…)、外国にルーツを持つ競技かるた選手の描き方が配慮ないな…ってところとか(外国ルーツだけど日本育ちで、自分たちにとって使いやすい言葉は日本語だってこの選手たちは言ってるのに、主人公たちグループは最後まで英語で会話しようとしたりするのでうんざりした…(『半分姉弟』を読んでくれー---)あと太一の台詞で彼らの英語を「間違ってる」って指摘するとこがあって(←英語でね)それも最悪だと思ったよ…)。
「親の気持ちは親にならないとわからない」言説が美談ぽく使われてるところも嫌だったな…(それは「基本的に誰もが親になるものだ」「親になることが大人になることだ」って価値観と分かちがたく結びついてると思うから。私はこれらの価値観を滅したい委員会のメンバーなのでね…。あとさ!!この台詞は(ちはやふるに限らず、一般的に)いっつもいっつも女の子にばっかりかけられるんだよな!!そこがまじできもい!みんな『母親になって後悔してる』を読んでくれー--この価値観ていうか美談がいろんな人の心をめちゃくちゃにしてることをちゃんと知ってくれー---)。

作者の末次さんはこういう点をちゃんと振りかえって前に進む方だと思うから、次回以降の作品ではぜひ変えていってほしい…。本当に好きな作品だからこそ、そう思う。

 

最後にまとめ…(?)。

まだ読んでない方が、長い作品であることを理由に読むの躊躇するのはとってもわかる。全巻そろえるのは安い買い物じゃないし、読み始めたら読み終わるまでもなかなか大変だし(長さの問題だけでなく、心の揺さぶられ方も激しいので)。でも、読み終わったら「これは必要な巻数だったんだな」って感じると思う。大事な気持ちが絶対たくさん残る漫画だから、ぜひもっともっとたくさんの人に読んでほしいです…。

 

今回挙げたおすすめポイント以外にも、「えっ、においとか音とかって絵でこんなに表現できるんですか!?」とか「百人一首をこんなに身近に感じられるとはな!!」って驚きとかが、いっぱいあって幸せになれるんだよ!

 

ということで1巻を貼っておきます。3巻まで読むと、まずこの漫画の勢いを知ることができると思います。

 

ちなみに『ちはやふる』、表紙がきれいなのも素敵なポイントなんだよねえ…。いくつかお気に入りの表紙も貼る。

 

ちはやふる(38) (BE・LOVEコミックス)

夏っぽくてきれいな色。

 

ちはやふる(45) (BE・LOVEコミックス)

ちょっとダークな雰囲気の表紙もいい。

 

ちはやふる(14) (BE・LOVEコミックス)

私はこの二人が大好きです。野菜もかわいい。

 

ちはやふる(46) (BE・LOVEコミックス)

花を掴んでるこのポーズ、なんか怖さとエロさを同時に感じるよね。新はピュアピュアな心を持ったキャラだけど、実は色気ある人でそこが好きです。

 

ちはやふる(21) (BE・LOVEコミックス)

何の漫画かさっぱりわからないこの表紙も好きです。笑

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10月までYouTubeでアニメも無料公開されるから、漫画からが大変な方はこちらから観てみるのもありだと思います!(1期から3期が1か月ごとに順番に公開される予定で、もうだいぶ終わっちゃったとこもあるんだけど…)。私も一部だけ観たけど、すごく丁寧につくられてるアニメでした!


もちろん漫画のほうがエピソードの追い方は丁寧だから、できればそっちから読んだほうがアニメも楽しめそうな気はするけども、たとえば競技かるたの速さの表現とかは、アニメはより臨場感があります。

prtimes.jp

 

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ちはやふる』ある程度読んでから実際の試合の動画を観ると、おお~これがあれか…っていうのがいっぱいあって、それも面白かったです。

 

youtu.be

 

(高校生の団体戦は、動画を一部観るだけでもドラマが感じられて熱い…。そしてこの動画に出てる高校、たぶん『ちはやふる』の「あの」学校のモデルだと思う…)

 

youtu.be

 

クイーン戦・名人戦は、迫力が凄まじいです!そして展開が速すぎるため、解説ないと、高校生の試合以上によくわからないです…。

 

コンテンツ月記(令和四年、葉月)

以前、バンコクで撮った写真。外国の公衆電話を見るのが結構好きだ。

読んだもの、観たものを、書きなぐりのメモで記録します。完読できてないものも、書きたいことがあったらメモします。すでに長めのレビューを書いてるものや書く予定のものは、基本的に除いてます(…と言いながら、ここで書いてる感想も割と長いんだけど)。


例によって、つい最近読んだり観たものの感想から、しばらく寝かせた感想まで、幅があります。先月分書けなかったのでいろいろたまっているよ…。


==評価基準(特に記載したいときだけ)==
\(^o^)/ 乾杯。愛。最高の毒なり薬。
φ(..) 特別賞(今後思い出すだろうシーン有等)
==ココカラ==


今月のお品書き↓

 

 

映画

プロミシング・ヤング・ウーマン

第93回アカデミー賞脚本賞を受賞した作品。メインの曲をはじめ、音楽の使い方がべらぼうにかっこいい映画だった。フェミニストは、ぎりぎり苦しい気持ちにも、スカッとした気持ちにもなる映画だと思う(フェミニストじゃない人にはこの映画のメッセージはたぶん届かないと思う)。

ちなみに作品タイトルの『プロミシング・ヤング・ウーマン』っていうのは「前途有望な女性」という意味で、「前途有望な青年の未来を奪うのか?」って脅し文句で性暴力被害者が黙らされ、性暴力加害者が軽い反省ですぐに解放されちゃう事態が横行していることへの皮肉になっている。

あらすじ↓

30歳を目前にしたキャシー(キャリー・マリガン)は、ある事件によって医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。その一方、夜ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。ある日、大学時代のクラスメートで現在は小児科医となったライアン(ボー・バーナム)がカフェを訪れる。この偶然の再会こそが、キャシーに恋ごころを目覚めさせ、同時に地獄のような悪夢へと連れ戻すことになる……。

Amazonの『プロミシング・ヤング・ウーマン』紹介ページより引用)

 

この作品は特にネタバレしないほうがいい作品だと思うのでほとんど何にも触れられないんだけど…キャシーという女性が最高だった。最高だっただけに、「あの事件」のときから、キャシーが訪ねた夜(からの朝)のときまで、「全然変わってない」人物たちがまああああ憎かった!!!一方で、この人物たちみたいな「傍観者」になっちゃいそうなときの勇気の出し方を、もっとわかりやすく教えてくれるものが必要なのかもしれない、って思った…(今回のケースとは違う場面だけど、私自身もこれまで何度も「傍観者」だったことがあるから…)。

 

フェミニズムの映画だけど、敵を「男性だけ」にしない姿勢も、すごく良かった。
今途中まで読みかけて止まってる本(↓)を読み終えたら、また感想が変わるかもしれないな。

(性暴力にさらされているのは少女だけじゃない、少年もだ、「男性は恵まれている」という主張だけでは解決できない問題がそこにある、っていうことについて書いている本。どんなジェンダーアイデンティティの人に対する性暴力もそうで、その原動力は性欲というより「支配欲」なんだろうなって思いながら読んでる…)

 

プロミシング…の話に戻ると、全体としてすごく惜しかった、と感じた。アカデミー賞(作品賞)を獲るには、あともう一歩何か、残るところが必要だったのかなと思う。

 

Coda あいのうた \(^o^)/

第94回アカデミー賞作品賞を受賞した作品。これは作品賞獲りますわ!!!!納得の一本だった。素晴らしいストーリー、役者陣、音楽、風景。

物語の山と谷がきちんとコントロールされてて、一番大きな山に心が載ってる表現(たとえば音楽とか)のシーンが来る作品でだいたい私はぼろぼろ泣いてしまうんだけど、今回も完全に心を持っていかれたよ…。

 

あらすじ↓

 

豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし・・・。

(『Coda あいのうた』公式サイトより引用)

ちなみにCoda(コーダ)とは、Children Of Deaf Adultsの頭文字をとった言葉です。

 

本作が話題になったときあちこちで宣伝されていたからご存じの方も多いと思うけど、この映画はろう者(聴覚障害を持つ人)の役をろう者の役者さんが演じていることがまず、画期的だったそう(それが「画期的」なのが終わってんなとも思うけど…)。『ドライブ・マイ・カー』では聴者(聴こえる人)がろう者の役を演じてて、それを観た手話を使う人の中に「手話が死んでいる感じがした」と感想を書いている人がいたけど、この映画を観るとその意味がわかると思う。

 

あと、障害を持つキャラクターの出てくる作品で、私がす--ごく大事だと思ってるのは、そのキャラクターが「とびきりの善人」としても「とびきりの悪人」としても描かれないこと。この作品に出てくるろう者のキャラクターたちは、チャーミングなところもうざい(笑)ところも両方持ち合わせてる人たちで、ちゃんと多面性を持って生きている人として描かれていた。セリフもそうで、綺麗ごとだけじゃない、「汚い言葉を手話で言う」シーンがあるところがよかったと思う。

 

ただ、この作品の課題…というより、障害者のキャラクターを擁する物語の今後の課題については、少し思うところがある。

「障害を持つ家族」と暮らす「障害を持たない家族」の話、後者が「完全に縁を切る」か「楽しいこともつらいこともあるけど、やっぱり楽しいのほうが上回るなと思って一緒にいることを選ぶ」のどちらかのパターンしか出てこないことが気になってる。
障害を持つ人が出てくる話で今後もっと描かれないといけないだろうなと思うテーマは、「障害を持つ家族と仲良くできない(あるいは、離れたいと思っている)、障害を持たない家族」のこと。特に「きょうだい児」(障害を持つきょうだいがいる子供のことをこう呼ぶ、大人になったその人は「きょうだい者」と呼ぶ)のこと。身体障害か精神・知的障害かで(そしてどんな障害なのかで)またいろいろ事情は違うと思うんだけど…。障害を持つ家族に対してずっと暗い気持ちを持ってる人の話も、いつかちゃんと取り上げないといけないと思う、ないことにしちゃいけないと思う。私は機能不全家族で育ったからなおのこと、広く福祉が行き届いて、それぞれの人が自分の選択で(「家族の問題は家族がなんとかしなきゃいけない」って罪悪感・責任感からじゃなく)、自分の家族とどれくらいかかわるかを決められるようになるといいなって思う。

 

最後に、関連作品として、日本のコーダについて描いているこの小説もとってもおすすめ↓。

日本の手話ならではの事情や、障害は「環境」がつくってるんだなってこと(ろう者にはろう者のコミュニティがあって、その中ではハードルは発生してない)、ろう者と裁判のことなどについて知ることができる。

(ただ、ろう者とかコーダの描き方は素晴らしかったと思うんだけど(←当事者の人が読んだら違うことを思うかもしれないのだけど…)、書き手の人のジェンダー観の古さはすっごく気になった!料理は女性がつくるものっていうのを前提としてる価値観とか、女性の人物の見た目だけ詳細に描写してることとか、女性の登場人物だけ下の名前で書かれてることとかね…こういうことでうげって思わされなくなる世界はいつか来るのか…?(来いよ))

マンガ

すみれ先生は料理したくない 1~4巻 φ(..) 

主人公は、幼稚園でピアノの先生をしている白雪すみれ、30歳。

周囲からは、美しく優しく上品で、きっと家でも料理など完璧にこなしているのだろう…と思われている女性だ。

 

しかし…すみれには秘密があった…。

こう見えて彼女は、壊滅的に料理ができない人だったのだ…!

職場のみんなにこの秘密がばれることだけは避けなければならぬ、と、毎話すみれ先生は料理に挑戦する。しかしそのたび料理の理不尽さ(とかめんどくささとか)に翻弄され、踏みにじられ、苦々しい思いをピアノにぶつけて、高らかに歌い上げる。たとえば、こんな感じに。f:id:arisam_queso:20220824224447j:image

(↑『すみれ先生は料理したくない』より引用)
f:id:arisam_queso:20220824224452j:image

(↑『すみれ先生は料理したくない』より引用)
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(↑『すみれ先生は料理したくない』より引用)


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(↑『すみれ先生は料理したくない』より引用)


f:id:arisam_queso:20220824224532j:image

(↑『すみれ先生は料理したくない』より引用)

 

このすみれ先生作詞・作曲の曲の疾走感が、毎回清々しくおかしくて、でも切実で、読んでいるとどんどんすみれ先生のことが好きになってくる。

(わかる…わかるよ…じゃがいも剥くのまじめんどくさいよな…!)

すみれ先生はこんなに料理が嫌いなのに、めげずに挑戦し続けてすごいんですよ…。

 

今の時代、みんなが笑える作品をつくるのってすごく難しいけど(難しいってことはそれだけ無視されない人が増えたってことで、絶対前の時代に戻るべきじゃないんだけど)、「めんどくさいよね!」「難しいよね!!」って思いをコメディの形で共有する方法があるのか!と目から鱗が落ちる作品だった。

「料理できない」ってことは、(特に、日本で生きている女性は「女たるもの、普通は料理できるべき」的価値観をしょっちゅう刷り込まれて生きているから)地味に自尊心を削ってくることでもあるから、これだけ軽やかだと救われるなーと思った。
(同じテーマで言えば、漫画家・瀧波ユカリさんのこの文章もとってもおすすめ)

 

ただ、(特に)女の人はいつかは結婚するってことを前提にしてるようなジェンダー観とか、ギャルのステレオタイプの描き方とかは好きじゃなかった。そういうのを修正してくれたら、ドラマ化にとっても向いてるマンガだと思う。誰もにとって他人事じゃないテーマで、すごく笑えて、明るい気持ちになれる物語だから。

(他のマンガだったら、ご都合主義すぎる設定などにも私はつっこみを入れると思うんだけど、このマンガはなんだかそれでもいいか…と思えるゆるさである笑)

 

私が読んだ時点ではKindle Unlimitedに3巻まで入っていたよ~。

料理が苦手な方、めんどくさいって思ってる方、レシピで簡単って言われてること全然簡単じゃねえ!って思ったことある方、に特におすすめの作品です。

(表紙に1巻とは書いてないんだけど、これ↑が実質1巻になっています(たしか好評だったから2巻以降も発売されることになったという話だった気がする))

 

崩れゆく絆 φ(..) 

普段、日本以外だと欧米(欧は特に西欧)のものばっかり観たり聞いたりしちゃうなあ…、もっと中南米やアフリカやアジアや中東のことを知らなければなあ…と思って読んだ、アフリカ(ナイジェリア)の小説。

地名などは架空のものが使われていたりもしたが、ナイジェリアの人々が(もっと細かく言うとイボ人が)キリスト教とどのように出会ってどのようにコミュニティが変わっていったか、その邂逅前後を、「アフリカ人」の視点から丁寧に描いている作品。特に邂逅前の、イボ人文化の描写が詳細でとても面白かった。

 

あらすじ↓

古くからの呪術や習慣が根づく大地で、黙々と畑を耕し、獰猛に戦い、一代で名声と財産を築いた男オコンクウォ。しかし彼の誇りと、村の人々の生活を蝕み始めたのは、凶作でも戦争でもなく、新しい宗教の形で忍び寄る欧州の植民地支配だった。

Amazon作品紹介ページより引用)


まったく知らなかった文化に触れることはこんなにも新鮮なのか…とドキドキしながら読んだ(えっ、じゃあ読めないかも…と思ったあなた。丁寧な解説が入っているので大丈夫、読みやすいです)。

例えば、人間たちだけでは解決できないもめごとが起こった際、オコンクウォが住む土地では「エグウグウ」という精霊たちのグループが裁きを下すことになっているんだけど(「精霊たち」は実際にはこの地の有力者の男たちが仮面をかぶって扮しているんだけど、その正体を探ることはタブーになっている)、この審判の始まり方とか、めちゃくちゃかっこいい。

 

 エグウグウが全員着席し、体にたくさんついた大小の鈴が鳴りやむと、悪霊の森が向かいに控える二組の集団に呼びかけた。

「ウゾウルの肉体よ、挨拶いたす」精霊はきまって人間を「肉体」と呼ぶ。ウゾウルは服従のしるしに、かがんで右の手を地面についた。
「ご先祖さま、わたしの手は地に触れております」とこのように男は述べた。
「ウゾウルの肉体よ、わたしのことがわかるかね」精霊がたずねる。
「わかるはずございません、ご先祖さま。われわれには知ることができません」

(『崩れゆく絆』より引用)


人間を肉体って呼んじゃうんですからね!!!!(興奮)

 

比喩とか諺に使われるものとかにも、文化がすごく反映されるよなーとゆるめ言語オタクとしては興味深くチェックしたわけなんだけど、「砂を一粒放っても地面に落ちていく隙間がないほど、すでにたくさんの人が集まっていた」とか、「太陽はひざまずいている者より立っている者を先に照らす」とかって表現に、異文化を感じてときめいた。

 

ストーリーの話に移りますと、『ルポ 誰が国語力を殺すのか 』という本(のディベート?の話)の中で、「差別っていうのは必ずしも数が多いほうが数が少ないほうにするものではない。少ないほうが、多いほうを恐れるあまりすること、そして力を持っちゃうことがあるよね」というような話が出てきたんだけど、まさにそれを地で行くような話でしたわい…。

 

でも、もちろん一方的に伝統文化を踏みにじる(この本の中で言えば、キリスト教徒たちがイボ人たちの文化を「野蛮」と断定し、否定すること)のはよろしくないのだけど、その「伝統文化」に生きづらさを感じる人たちにとって、新しい文化は希望になることもあって、そういう面も描かれていることがフェアだなと思ったよ。

 

たとえば、主人公のオコンクウォ、妻にも子供にも暴言吐きまくり殴りまくり、戦争では人殺しまくり、悲しい気持ちなんかの弱い感情は決して外に出しちゃいけないと思ってるTHE・マッチョ。このコミュニティはそれこそが男だとされてるんだけど、こうじゃないと男はいかん!って、生まれたときから決まってるコミュニティで歩んでいくこと、人によっては(というか結構な数の人にとって)死ぬより苦しいと思うよ…。そう、これは「有害な男らしさ」の本でもあります。キリスト教徒がやってこなくても、戦争より音楽が好きなオコンクウォのお父さんみたいな人も伸び伸び生きられるようなコミュニティになれたら、よかったと思うんだけどなあ…(と、私の価値観のものさしで「べき論」を述べることがもうよくないんだろうけども…)。

 

日常漫画:恐怖のぜんまい仕掛け

気づいたら8月ですね。皆様お元気でお過ごしでしょうか。


なかなか他の記事が書けず…。同居人である恋人との日常漫画(エッセイ漫画)を久々に描いてみました。私たちはだいたい毎日こんな感じです。

 

 

ウシジマくんはいつも怖いですが、「洗脳くん」は悲しいと怖いが怒涛のように押し寄せてきて最後まで読み切ることができませんでした…。

守るもののために嘘をつき続ける勇気を、あなたは持てるか?:映画『由宇子の天秤』の感想

由宇子の天秤

 

去年か一昨年かにTwitterで話題になっていたなあということを突然思い出して、まああれだけ話題になってたなら良い作品であろう、と、配信観放題の範囲外だったが購入して観た。

で、すっごくよかった!ほんっっとにレベルの高い作品だった。しかし、まあ、重かった!!観たあともずっしり残る作品。一切すっきりしません。世界の理不尽さに押しつぶされます。今後も何かあるごとに思い出すだろうなと思う。


まず、あらすじ。

ドキュメンタリーディレクターの由宇子は、3年前にとある地方で起きた「女子高生いじめ自殺事件」を追っていた。由宇子がその事件を追うのには理由があった。当時、女子高生の自殺をきっかけに、報道合戦はエスカレート。学校はいじめを隠蔽するために、女子高生が講師と交際関係にあることをでっちあげ、女子高生を学校から退学させようとしたのではないかー?いじめられていたとされる女子高生は、素行が悪く講師に色目を使っていたのではないかー?真偽のわからない様々な情報がメディア上に飛び交い、交際を噂された講師にまでバッシングは及び、その講師も自殺してしまうという特異な事件だったからだ。由宇子は、テレビ局の保守的な方針と対立を繰返しながらも、遺族への取材を粘り強く続け、事件の真相に迫りつつあった。そんな時、由宇子は学習塾を経営する父から思いもよらぬ“衝撃の事実”を聞かされる。

Amazon『由宇子の天秤』紹介文より引用)

すべての役者陣と演出ががっつりはまってて素晴らしかったんだけど、主役の木下由宇子を演じた瀧内公美さん&その父を演じた光石研さんが、まああああ素晴らしかった!!

まず木下由宇子って人が、ほんとに素敵な女の人で。この人は、「自分が楽になるために正直さを選ぶ」ことをしない人。人を守るためにここまできっぱり嘘をつける(あるいは口をつぐめる)人、その罪悪感を背負い続ける勇気を持てる人、なかなかいないと思う(少なくとも私は一生できないと思う…勇気がない故の正直者だから…)。瀧内さんの目線とかたたずまいの説得力がすさまじかった。でも寄り添うべき人の前では柔らかい笑顔を見せるところも、人間として好きだなあ、なんてかっこいい人なんだろう、とまずそこに引き込まれた。彼女は判断が難しい場面で、一発で最善の答えを出せる。

 

で、ですよ!そんな由宇子さんが、父親のせいで、あることに対しても嘘を背負わなくちゃいけなくなってしまう。
そこまでの光石さん(由宇子さん父)がねー、超いい塾の先生って感じで、ああこの人は子供たちから愛されているだろうな、由宇子さん(ドキュメンタリーディレクターしつつ、塾の講師もして父親を手伝ってる)とのタッグもいい感じだなあ、この塾そのものが、きっと地元から愛されているんだなあ…うふふ…、と温かい気持ちで観ていただけに、ほんとにここのターニングポイントがつらくてね…。ショックだった…。“衝撃の事実”を明かしたあとのお父さんの、ことあるごとに狼狽する様子とかもうむかついて仕方なかったね。誰のせいで由宇子さんがこんな目に遭わされてるんだよ!っていう。なぜか他人事風の物言いなんだよな、この人!!今更冷静な大人ぶっても遅いですから!!(←と、リアルな怒りが発生するほど、光石さんの木下政志の体現ぶりがすごかったです。服装とか仕草とかも完璧でよォ…)


そこから先のストーリーは、意外な方(苦しい方)にどんどん転がっていきますので、あとはぜひ本編を観て、新鮮な気持ちで地獄に浸ってみてください…(嫌な勧め方)。


全体的に画面がちょっと古びた質感というか、独特の味わいがあって、出てくる人たちの会話も行動もごくごく自然だから、「ドキュメンタリーをつくる過程を撮ってるドキュメンタリー」を観ているような楽しみもあった。「世のドキュメンタリーをつくってる人たちは、きっとこういう葛藤を経て作品を世に送りだしてるんだなあ…大変な中、暗い所にいる人たちに光を当ててくれてありがとう…それを届けてくれてありがとう…」という気持ちにもなった(まあ、「光を当てる」こと、「届く」ことはいいことばっかりでもなくて。そういうマスメディアの功罪に向き合おうとしている作品でもあると思う、本作)。


<以下、断片的に、その他印象的だったところ(主に観たあとの方向け)>

・『岬の兄妹』の妹役だった和田光沙さんと、『恋人たち』で弁護士役だった池田良さん、またいい仕事をされています…。和田さんの役は、細かい感情の機微が丁寧に演じられていて、下手するとここで冷めちゃうぞーってシーンのテンションが維持されててすごかった(演出もよかったと思う、わかりやすさに重きを置いてるドラマとかだったらカメラが寄りそうなところを引いて撮り続けるから緊張感が続いてた)。池田さんの役は、池田さんだから醸せるユニークな存在感だったな。ちょっとユーモラスだけど不気味な人だった。

 

・由宇子と富さんの関係性がめちゃくちゃ好きだった。由宇子が富さんとため口で話してるところも含めて。上下関係の緊張感って萎縮を生むことのほうが多い気がするから、誰とでもあれだけフラットに仕事ができたらいいのになって思う。富さんは、由宇子に理想は捨てて現実を見るように言いはするけれど、自分の倫理観を曲げずに生きてる由宇子を羨ましく見てて、そのままでいてほしいとも思ってるんじゃないかな。一緒に観てた私の恋人は、「富さんは由宇子を『青い』って言ってたけど、それは昔自分自身が言われたことのある言葉だったのかもしれないね」って話してた。


・観終わったあと、恋人と「萌(めい)ちゃんのお父さんも画家になりたかったのかもしれないね」と話し合った(部屋の中にたくさん画集があったから)。古そうだったから、実家から持ってきたものなのかもしれないな。萌ちゃんとお父さんもつらいキャラクターでしたね。。。私は萌ちゃんが家の中で箸を使わせてもらえない理由の会話のくだりで感情が限界を迎えた…つらすぎた…。あと、海外の映画だと「奨学金」はシンプルに希望として提示されることもあるけど、日本の大学の奨学金って多くは借金になっちゃうからさー…それもすごいつらかったよ…。

『初恋の悪魔』初回を観た二人が、今後の予想とかをがやがやする

 

前回のブログで選挙の話をしてから、まあいろいろありましたね…。日本のまじかよ度がさらに増しましたね…。引き続き政治の話もしつつ(だってほっとくと驚きの速度で暴走していくんだもの😢)、エンタメに助けてもらいながら生きていきましょう…このヘルジャパンを…。


ということで今回は、2010年代以降の坂元裕二脚本作品をいろいろ観て愛している二人が、2022年7月から始まった坂元さん脚本ドラマ『初恋の悪魔』の初回を観て、わいわいがやがや勝手に騒ぐ回です!長いよ!!

 

初回観た方向けの話になっているので、まだの方は2回目の放送前にぜひTVerとかで初回を観てみてね!!今までのドラマとはほんとに違う謎のストーリーでおもしろいよ!

 

tver.jp

(↑いつか公開終わっちゃうかもしれないけど、とりあえずTVerの一話へのリンク貼っておくよ~)

今回の「がやがや」の登場人物

けそ(右で見てる人):このブログを書いている人。毒親育ちで毒親とすんなり和解する系のドラマが大嫌い、『カルテット』の第三話のそば屋のシーンが大好き。そこから坂元さんの脚本を愛している。

ノビオ(左で踊ってる人。以下、ノビ):けその同居人で恋人。今でもしょっちゅう『それでも、生きてゆく』の大竹しのぶの真似をしている。手にこだわりがあるので『大豆田とわ子と三人の元夫』のオダジョーの手のエロさ(のすばらしさ)についても頻繁に口にしている。


初回のざっくり感想

ノビ:今まで観たことないドラマだった。このドラマはどこに行っちゃうのか、まったくわからなかった。それでいて面白かったから、これは坂元さんにしかできないドラマだよ…と思ったね。

 

けそ:一話の段階では私はまだ「すっごい面白い!」とは思えなかったけど、坂元さんじゃないと作れないドラマだっていうとこには同意。キャスト陣の安定した演技力があるからこそ、それが生きているなとも思った。あとは、坂元さんの倫理観を基本的に信頼してるから、安心して観られるっていうのが大きかった…。


ノビ:重要なポジションに女性を置くようにするとか、そういうところを坂元さんはしっかり考えてつくってるよね。

 

けそ:ほんとうにそれ!!坂元さんは、女性キャラを絶対にお人形的に使わない。『石子と羽男』、期待してたけどそういう点が「あー…だめだ…」って思って、他にもマイナスポイントが結構あったからかなり冷めちゃった(『石子と羽男』のだめだったとこの話になるとそれだけで我々は一日話せちゃうから、一旦置いておくけれども…)。

今人気の脚本家さんだと、坂元さん以外に野木亜希子さんがまず名前が挙がると思うけど、今野木さんはすごく正義を背負わされちゃってる感じもして…。逃げ恥お正月スペシャルとか、教育番組みたいになっちゃってた。大事なことを描いてるんだけど、それだと観てもらえる人が減っちゃうだろうなって心配もある。今回のドラマは、目立たなくて、(他の人から「変わってるって言われやすい」)生きづらい人たちとか、ないがしろにされてる弱い立場の人たちにスポットライトを当てるっていう、坂元さんの優しいまなざしがありつつ、観る人によっては「ただの」コメディだと思って受け取れるバランスがあるから、遠くまで届くんじゃないかな、って思う。もちろん、野木さんの作品には野木さんのよさがあるわけなんだけど。

キャストとかキャラとかについて

けそ:もう、(仲野)太賀に早く坂元作品に加わってほしくてほしくて仕方なかったから、太賀出るって知ってめちゃくちゃ嬉しかった!世の中に太賀のすばらしさを早く知ってほしい!(私たち二人は、『コントが始まる』以来、仲野太賀さんの演技の大ファンです)

ノビ:「太賀知られてないって思ってるのが、我々だけ説」あるけどね。評価されてるからこそ、このドラマにも出てるのでは…。


けそ:太賀は、微妙に嫌な小物の役も、「この人は頼れるなあ」って人の役も、なんでもできるんだよね。『アズミ・ハルコは行方不明』も、『僕の好きな女の子』も、『淵に立つ』も(けそ注:全部太賀さんが出てる映画です)、それぞれとっても丁寧な人物造形で、心の細かい機微が感じられる演技でよかった…!全部、そういう人に見える。

(↑ストーリーのオチはうーん…だけど、それぞれの役者さんが素晴らしすぎる映画。日常会話がほんとうにさりげなくて、テンポがよいので会話を観てるだけで楽しい。渡辺大知のよさも余すところなく発揮されている…。あんなにダッフルをかっこよく着られる人、いますか????(渡辺大知の話になっちゃった。渡辺大知氏にも坂元作品に出てほしいとずっと願っている!!))

 

けそ:あるインタビューで林遣都が話していたけど、太賀が演じている馬淵さんて、ものすごく受け手にまわっちゃいそうな、地味な存在感のない人になっちゃいそうなポジションなんだよね。なのに、太賀が演じるから華があるし、存在感がある。

 

(これは私の気のせいかもしれないけど、鹿浜VS小鳥で「ごめんね」「いいよ」っておそろしく完璧なテンポで掛け合うシーン(好きすぎて巻き戻して4回は観た)、直後にちょっとだけ太賀が笑っちゃってる気がする…あれは笑わずにはいられないよねって思うんだけど、そういう、太賀の人としての温かみを時々、ほんの数ミリ、感じるんだよね…(ひいき目だからか!?)

ノビ:細かい演技を入れてるんだよね。たぶん彼が演じる馬淵さんは、捜査をする仕事に憧れがある人なんだろうなって思う。テープを配りながらも現場をじっと見てたし、レギュラーメンバーの会議に、丁寧なパワポを持ってきて一生懸命話してる。
(しかしあのパワポ、毎回出てくるとしたら美術さん大変だな…。再現シーンの模型も大変そうだと思ったけど)

 

けそ:縁の下の力持ち役を引き受けてる人のように見えるけど、ほんとうはそういう今の自分に満足してないんだろうな…っていう感じも滲んでいて。その感情が爆発する瞬間を太賀がどう演じるのか、楽しみにしてる。

 

けそ:では次は鹿浜さんを演じる林遣都氏について。我々はさ、林遣都出演作品を観たことがたぶんなかったけどさ、あの人、すごいね。

ノビ:うん。きれいめイケメン路線の人かと勝手に思っていたけど、なんというか…いい意味で汚くてやばくて最高だった。基本的に目がガン決まってるし。特によかったのが走り方。

けそ:第一話の最後のほう、ごみ捨てする隣人を観察してたあとの走り方だよね。我々はTVerで観たけど、走り方良すぎて、これも4回くらい巻き戻して観たもんね。

ノビ:『よこがお』の筒井真理子の走りに並ぶ衝撃だった。

(けそ注:『よこがお』の中で出てくる夢のシーンで、すんごい走りをするんですよ筒井さん…)


けそ:万引き家族リリー・フランキーの情けない走り方も、これらのベスト・ラン・セレクションに加えてほしい。


ノビ:走り方って、こんなに人間性が出るんだなあ、って思う。

けそ:続いて、松岡茉優さんと、彼女が演じる摘木さんについて。まだそんなに出てきてないけど、まあキーになるキャラだろうね、この人は。

 

ノビ:一話の最後で示唆されてたけど、たぶん、摘木さんは二重人格だと思うんだよね。部屋のテイストと、「記憶はないけど摘木さんが買った」靴とかバッグが収納されてるクローゼットの中のテイストが、全然違ったもんね。あるいは双子とか…?

けそ:いや、二重人格だと思う。最後のほうのシーンの摘木さんは鏡に向かって話しかけてたけど、それは自分自身の中に別人格がいるから、じゃないかな?あと、急にはしごの上で動けなくなっちゃってた時、あれもはしごを用意するところまではもう一人の人格がしたのかもしれない、って思う。途中で、今のぶっきらぼうな摘木さんの人格に入れ替わったんじゃないかな。
ネット上にあるキャストインタビューをいくつか読んで、におわされてる…?と感じたのは、今前面に出てる摘木さんのキャラのほうがおそらく裏人格で、高級な靴やバッグを買っちゃう摘木さんのキャラのほうが表人格なんじゃないか、ってこと。表人格が馬淵兄殺しに何かかかわっちゃったから、異動させられたんだろうか?

 

ノビ:殺人にかかわるようなやばいことしたら、仕事辞めさせられるんじゃないかな?辞めさせられるほどじゃないけど、捜査権は取られちゃう、それくらいの失態を犯したんだろう。それはいったいなんだろうね?

 

けそ:町医者(演じるのは、坂元作品でおなじみの田中裕子さん)もたぶん何か絡んでるんだろうね。4人が捜査するときのルールを考えようってなったとき、「1.被害者に同情しない 2.加害者を裁かない」(たしか)って、まったくよどみなく摘木さんは言ってたでしょう?彼女が前に何か過ちを犯してしまったときに今後の自分のスタンスとして決めたことが、この二つなんじゃないかな。つまり、彼女は過去に、この二つをやっちゃったことがあるんだろうな、それが異動の原因につながってるんだろうな、って思ってる。

 

ノビ:今回、メインになりそうな女性達の服装とか髪型とかは、いわゆる「女性らしい」ものじゃない雰囲気にしてるんだろうな、っていうのを感じたけど、摘木さんのメイクは独特だよね。

 

けそ:うん、服装に対してメイクがちょっと違うテイストな気がする。ドラマ全体も80年代っぽいテイストを若干意識してるのかなと思うから(音楽のセレクトとか)服選びとか髪型のチョイスもちょっと80年代とかに寄せてるのかな?と思ってたけど、メイクももう一つの人格に関係あるのかもしれない。

 

ノビ:あともう一つ気になってること。もう一つの人格に対して「あの蛇女」みたいなことを、摘木さんが言ってた点。摘木さん以外の主要キャストには、動物の名前がつくんだけど(「馬」淵、「鹿」浜、小「鳥」。ちなみにTwitterで指摘してた人がいるけど、馬淵鹿浜コンビは「馬鹿」って並びになってる)、摘木さんだけつかないんだよね。そこで出てきた「蛇」という言葉。なんであえて蛇なのか、気になってる。

けそ:続いて、柄本佑氏演じる小鳥さんについて。ノビオちゃん、予告の段階から彼の走り方(やっぱり、走り方!)についてつっこんでたよね。

 

ノビ:上着のポケットに手つっこみながら走るのって、変じゃない?見たことない。

 

youtu.be

(↑この予告でいう、14秒目くらいから小鳥さんが走ってるところ、出てくる)


けそ:小鳥さんって、時々ものすごくぼそぼそ話してるんだけど、柄本さんの演技だとちゃんと言葉は聞こえるから出力の調整が絶妙だと思う。

 

ノビ:そうだね。あと、小鳥さんは微妙に発達障害なのかもしれないなって描かれ方をしてると感じる。電気が消されて暗い部屋でもずっと待っているところとか。

けそ:そういう「ふつうじゃない」って言われちゃいそうな人の言動を、ただ「変」だって見世物にして扱う番組はもう観られないけど、坂元さんは馬鹿にしないで描く人だから、安心。笑いのシーンを入れるにしても、見世物にしてる人ってやっぱり怖さが伝わってくる、とげを感じるから。
あと、鹿浜さんと小鳥さんはどっちも「ふつうじゃない」キャラだけど、その二人のキャラがかぶらないで観やすいのも、坂元さんが人間を立体的に書いてるからだなって思う。似てるように見えて、ふたりの性格は方向性が逆なんだよね。鹿浜さんは恋愛を信じてなくて小島さんは恋愛に陥りやすい人だったり、鹿浜さんは世の中の他の人間にほとんど興味がないけど小島さんは社会的な正義感をけっこう大事にしてる人だったり…(まあ正義感にもいろいろあるわけなんだけども…)。
柄本さんが出てる作品ってあんまり観たことないから、これから楽しみだなと思ってる。

現時点での気になるポイント・謎

けそ:今後それを追ってくために、1話で提示された謎とか、気になるポイントをざっと挙げてみると、以下のような感じかな?

 

1.馬淵さんの兄殺しの真相。誰が兄を殺したのか?

2.鹿浜さんが見張ってる怪しい男(森園)は、何かしでかしちゃうのか?

(この物語が森園さんのシーンから始まっているのがもう意味深ですよねえ…)

3.摘木さんは二重人格なのか?

4.摘木さん、昔の写真ではたぶん事件の捜査をしてたんじゃないかと思われるけど、なんで今は生活安全課にいるのか?

5.小鳥さんの恋はどうなるのか?

6.鹿浜さんは美しい罪を犯す犯人に出会えるのか?(あるいはもう出会っちゃってるのか?)

7.馬淵さんと小鳥さんはなんで今の仕事が好きじゃないのに警察で働いているのか?そして二人はなんで仲良くなったのか?

8.摘木さんと知り合いの町医者は昔摘木さんと仕事してたっぽいけどどういう関係なのか?

9.4人は捜査権ないのに勝手に捜査して服部刑事にタレコミしてるけど、いつかばれちゃわないのか?

 

ノビ:ざっとって言ってるけど、多いね(笑)。

タイトルの話、今後の展開の予想

ノビ:このタイトルさ、すごくいいよね。「初恋」と「悪魔」って、全然結びつかなそうな言葉じゃん。ていうか坂元作品で「初恋」って言葉が入ってるのがもう意味深だよね。

 

(けそ注:坂元さんは『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』をつくるとき、主人公二人を別れさせたいと思っていたらしい(結局そうならないんだけどさ…あのドラマはあんまり坂元さんぽくない作品だと思って観た)。「20代前半に出会った男女が別れないはずがないじゃん、それは嘘じゃん」と思っていたと(坂元裕二特集のユリイカにそう書いてあった(笑)。

坂元さんの作品では、恋愛っぽいムーブを見せたりこれは両想いだねっていうのを見せるけど結局カップルにはならない人たちとか、一回カップルだったけど今は友達として生きてる人とかがいっぱい出てくる。つきあう=ハッピーエンドだと思ってる人じゃない。つきあわなくても相手を思う温かさ、を肯定する人だとも言える。だからこそ、「なんでこのタイトルなんだろう?」って疑問がわく、『初恋の悪魔』)。


ノビ:しかも、一話で「人類はもう恋愛を克服した、恋愛はいらない」って言わせてるってことは、たぶんこれが裏返される展開になってくる話なんじゃないかな。つまり、恋愛によっていろんな人間関係がかき回されることになる、と思う。

けそ:「初恋の悪魔」って、ふた通りの意味で読める言葉だなーと思って。

一つ目は、「初恋の『相手』が悪魔だった」って意味。二つ目は、「初恋『一般という存在』が、イコール悪魔だ」っていう意味。たぶん坂元さんは、両方の意味を込めてこのタイトルにしてるのかな?と思うのだけど、二つ目の意味は、さっきノビオちゃんが話してた内容と重なるよね。一方、一つ目の意味を考えてみると、今後のストーリーが少し予想できるのかな?って思う。「誰かの初恋の相手が悪魔だった話」を、このドラマで描いていくのかな?という。

第一話では、鹿浜さんが摘木さんに感じる気持ちを、鹿浜さん本人は「殺意」、馬淵さんは「恋では」と言ってた。公式サイトの人物相関図でも、鹿浜さんから摘木さんへの矢印は「恋『?』」になってる。はてなマーク付きなんだよね。

www.ntv.co.jp

鹿浜さんがこんなに「美しい犯罪」をする者を求めてる描写をしてるってことは、たぶんもう身近にそういう人がいるんだと思う、そういう犯罪者はすでに一話に登場した人の誰かなんだと思う。それがたぶん、摘木さん(の、今隠れている人格)なんじゃないかな…?兄殺しの件じゃないにしても、この作品の舞台は(いろいろ話題になる)神奈川県警で、さらに一話目で刑事たちの間にことなかれ主義っぽいムードが流れていたことも描かれていた。摘木さんの何かが、組織ぐるみで隠ぺいされているのかもしれない。

 

(でも、坂元さんがねー女性たちをただ「悪魔」ポジにするわけはないんですわ…誰にとっての「悪魔」なのかっていう。最近ノビオちゃんが魔女狩りの歴史のこと調べたりしてたけど、例えば家父長制にとって堕胎する女ってのは「魔女」扱いされていたわけで…(悪魔って、あんまり自称してないと思うんだよね、「あいつは悪魔だ!」って言われることが多いけど。しかも「あいつは悪魔だ!」って告発してるの、男ばっかりじゃないのか…?っていう…(byノビオ))

 

(ちなみに前述の相関図では、小鳥さんから服部刑事への矢印にも「恋?」って書いてある。服部さんも、もしかしたら悪魔なのかもしれない。小鳥さんのこの恋が初恋なのかどうかは、わからないけど。結構気になる文言が書いてある相関図なので、考察好きの人は見てみるといいかも。逆に、まったく先入観なしにドラマを観たい人は見ないほうがいいかもしれない)

その他気になるところ

・(ノビ)坂元作品で伊藤英明出てくる?ってびっくりした。まるでふつうのドラマのキャストみたいじゃん!(←どんな感想?(笑)byけそ)わざわざ伊藤英明を入れてくる理由がきっとあるんだろうなって思う、馬淵兄を殺した犯人が実は署長、とか。

 

・(けそ)坂元さんは無駄な伏線は張らない人だと思うから、署長とのやり取りで出てきたボーリングの話が後半のほうで何かに繋がってくるんじゃないかと思ってる。わざわざ、上からボーリングの球を投げる話をしてるし、何かの証拠品みたいなボールなのに署長は素手で触ってるし、意味深。(←上から投げるのは、「何かおかしいとは感じているけど無理をしてる、いびつな男性性」の象徴なのかも。お兄ちゃんも署長もマッチョ的だったということの示唆…? byノビ)

 

・(ノビ)この規模のドラマなのに、エンディングが微妙にしょぼい気がするから、これからエンディングが変わっていくんじゃないかな?って思ってる。エンディングにはルービックキューブが出てくるけど、メインビジュアル(4人のキャストの顔の角度がルービックキューブみたいに?変えられて置かれている↓)とか公式サイトのデザインも若干これを意識したものになってる気がして、何かの鍵になってるのかも、ルービックキューブ

 

www.youtube.com

 

・(けそ)摘木さんはなんでぼろい自転車、それもアヒル隊長がついてる自転車に乗ってるんだろう…?

・(ノビ)坂元作品にはしょっちゅう「出せない手紙」が出てくるけど、今回は手紙が出せるのか!?にも注目したい。

 

ーーー

 

果たしてこれからどうなっちゃうのか…?(そして手紙は出せるのか…?)楽しみです!!

2022年参院選、私はどこに投票したかの話

 

私だって政治の話とかできればしたくないんだけど(不勉強なとこも多いし…)、できれば『チ。』おもしろかったー-の話とかバチェロレッテ2の話とかしていたいんだけど、今の流れのままだと、インボイス制度ばかりか、日本でも絶対徴兵制が導入されちゃうと思う。

ということで、「投票行っても何も変わらないやー」と思ってる人、あと前の私みたいに「選挙行くには行くけど、誰に入れるかどうやって選べばいいのかよくわからない」と思ってる人に届け~と思って書く(今回は主に国会議員を選ぶ投票の話について)。

 

「どうせ入れたって意味ないでしょ、いつも通る人は決まってるんだから」と思う人へ


そんなことないんだよー-。選挙で一番多いのは、「どこにも入れていない人」なんだよーー-。


これは過去の選挙のデータだけど↓

 

政治家は、「えらい人」じゃなくて、「わたしたちの代わりに、わたしたちの意見をふまえて、政治の仕事をしてくれてる人」。コンビニのレジ打ち、新聞の記事書く、ごみ回収、介護、アイドル活動、この社会はいろんな仕事をみんなで分担してまわってる。
彼らはあくまで「政治」を担当してくれてる人であって、「彼らが決めたことにしたがわなきゃいけない」んじゃないのです!

わたしたちは、日本をどうしたいか、選挙とかを通じて政治家(や候補者)に意見を伝える。その、みんなが望む社会づくり(のための話し合い)をしてくれてるのが、政治家。意見を出さなかったら、政治家とずぶずぶの人の希望ばっかり通っちゃう。。。
がんがん希望を出していこう!

でも、入れる人って、どうやって決めたらいいの?

選挙って考えること多くてよくわからないんだよなー…という人におすすめなのが、このサイト。

みんなの未来を選ぶためのチェックリスト

 

choiceisyours2021.jp

 

私は選挙権もったばっかりの頃は、選挙公報(新聞みたいな紙に印刷されてる、公約とか候補者の経歴とか書かれてる紙)を読んだりして意見が近そうな人に入れていたけれど、選挙公報って、候補者が自分の好きなフォーマットで、好きなように書けるんだよね…。つまり、候補者が書きたくない内容(不利になりそうな内容)はわざわざ書いてない。

人によって特に気になるテーマは違うと思うのに、(例えば「同性婚も早く可能にしてほしい!」だったり、「教育にもっと税金使って欲しい!」だったり、「税金下げてほしい!」だったり)、選挙公報で扱ってるテーマが人によってばらばらなことってすごく不便。

(ちなみに私にとって今回特に気になるテーマは、①今の憲法改正案に賛成か反対か②インボイス制度導入に賛成か反対かの2点。(いずれも、反対派に入れたい)。)

このサイトでは、各党にいろんなテーマで質問を送って、それに対する回答をまとめてくれているので、自分が気になるテーマについてどこの党がどんな考えを持ってるのか、テーマごとに見ることができる。

このサイトで知れるのは「政党」の傾向なので各候補者についてはまた調べる必要があるんだけど、それでも同じフォーマットでまとめてくれているので、すごく参考になると思う。

私は今回誰に入れたのか?

私(2022年7月現在東京在住)は、日本共産党山添拓さんに入れました、期日前投票で。比例も、共産党に入れました。

 

まず、今回絶対外せないポイントだと思ったのが、憲法改正」を止めてほしい、ってこと。

安倍元首相の追悼のために自民党に入れようとしてる人(入れた人)もいると思うんだけど、彼を追悼することと、選挙で意志表示をすることはまた別のこと。
気に入らない人間を暴力で消そうとすることはもちろんよくないことだけど、今回自民党に投票することは、そのおそろしい暴力に近づくことだと、私は思う。

なぜかっていうと、自民党は、憲法を改正して、戦争がしやすい国・個人の自由を限定的にして国にとって都合のいい人間を優遇する国、をつくろうとしてるから…。

かわいい絵でわかりやすく改憲されたらどうなるかを描いてるマンガ↓

 

 

(この案はずいぶん前に出されたもので、今はもっと違う案になっているよ、と主張している自民党の議員だったり自民党支持層の人もいるんだけど、でもこの案、「取り下げた」ってことはどこにも書いていないそうで。それは、いつかここにたどり着きたいって気持ちがあるからなんだと思う…)

 

このページ↓もぜひ読んでみてください…。こわいんですよこの案…。

 

kenpouhikaku.com

 

あと、インボイス制度の導入を止めてほしい、ってこと。
(私は特に弱小自営業だから切実にこの気持ちを持ってるけど、自営業じゃない人にもいろんな影響がある制度)

 

stopinvoice.org


この制度、弱い立場の人からも税金取るだけでなく、個人事業主も自分の本名をさらさないといけないことになってる…そのデータはだれでもダウンロードし放題…。嫌すぎる。

 

 

以上で、私が特に気になってるテーマの話は終わり。
これらについて、私と近い意見を持ってる政党は、共産党社民党・れいわ新選組

ここからさらに絞る。

今回投票先を選ぶ上で「本当に弱い立場に立ってる女性のことを真摯に考えてくれる党か?」どうかについても調べた。具体的には、AVに出なきゃ・風俗で働かなきゃ生きていけない女性をちゃんと福祉につなげる気があるのかについて。

「AVに出る女性・風俗で働く女性が、安全に働けるようにしましょう!」ということを主張しているところがいくつかあるんだけど、それでは、「ほんとうに心からその仕事をしたいと思ってるわけじゃないけど、そうするしかなかった」人は助からない。

…んだけど。10代の居場所のない女性たちとともに活動している仁藤夢乃さんのTwitterを読んで、ショックだった。

 

 

 

ということで、社民党は私の中でなしになってしまった。
(良いところもあるのにすごく悲しかった…)

(ちなみに、立憲民主党も、風俗で働かないといけない女性よりも業者側の立場になっている方(要由紀子さん)を候補者としているので、今回は支持できないと思った)

性産業のテーマについては、爪半月さんのコラムも、ぜひ読んでほしいです。一番弱い立場の当事者の目線で書いている方。

 

www.lovepiececlub.com

 

www.lovepiececlub.com

 

れいわ新選組は、いいと思う取り組みもしているんだけど(重度障害をもつ木村英子さんや舩後靖彦さんを国会に送り出したことなど)、女性候補に「コマネチ」させる雰囲気があるところなど、ホモソ的なノリがちょっと無理だと思うところがある…。

で、東京選挙区で共産党の候補になっている、山添拓さん

彼は、国会でも素晴らしい答弁をしている方だし、自分で足を運んで現場を見ている方だから、ぜひ入ってほしいと思って入れた。

 

 

 

選択的夫婦別姓の勉強会も、共産党でセッティングをしたのは山添さんとのこと。


障害を持つ方の声にも耳を傾けている。

 

Twitterをやってないと、政治の多面的な情報ってなかなか入ってこないよね…。私もTwitterをやってたから知った情報がいっぱいある…。でもTwitterは自分の見てる世界がすべてになっちゃいそうな危険性があるから、ほかの情報と組み合わせながら使わないといけないなと思う…。私はTVを持ってないからTVは観ないんだけど、同じような方には、TBSラジオおすすめです、特に荻上チキさんの番組とか)

いつもは絶対この人に入って欲しい!って感じで入れてないけど、今回山添さんは絶対入って欲しいと思ったし、事前報道だと当選するか落選するかぎりぎりのところにいるという情報もあるし、だったので、初めてチラシをポスティングしたり、街頭演説聞きに行ったりしたよ。投票以外にもいろいろできることはある!!!(と信じたい)

とはいえ、選挙行ったことなくて、投票方法とかわからない、こわいな、大丈夫かな…と思う人へ

NO YOUTH NO JAPANという団体が、投票の方法をわかりやすく教えてくれているのでおすすめです!

 

参議院衆議院の違いってそもそも何?投票ってどうしたらいいの?…というような疑問にも、インスタとかで答えてくれているよ。

NO YOUTH NO JAPAN 選挙の教科書 参議院議員選挙2022

nynj2022.studio.site

 

どの候補者も別にすっごくいい、ってわけじゃないんだよな…って人には、「どの人が通ったら最悪なのか?その人じゃない人を通すにはどうすればいいか?」って観点から投票するのも、おすすめしますぞ~。


私は、一部のお金持ちや権力者や特権階級だけが幸せに生きられる国では生きていたいと思わない。
同じ思いを持ってくださる方、読んでくださる中にもきっといると信じています。
ぜひ投票に行ってください!!